再生医療の豆知識

がんにも存在する!再生医療で用いられる幹細胞

2018年12月07日

身体の細胞の機能の維持だけでなく、再生医療において重要な役割のあるのが幹細胞といわれる細胞です。近年、がん細胞にも幹細胞が存在することが明らかになりました。この記事では、幹細胞やがん幹細胞について解説します。

再生医療で用いられる幹細胞とは

再生医療で用いられる幹細胞とは
再生医療は、特定の細胞や器官を再生したものを移植したり、細胞がもともと持つ修復能力を促す治療する方法です。この再生医療の中でも重要となるのが「幹細胞」です。幹細胞について具体的に説明すると、特定の細胞に分化したり、自分と同じ能力を持つ幹細胞を分化させる細胞のことをいいます。幹細胞はいわば細胞のタネのような存在で、身体を構成するさまざまな組織や器官には、幹細胞があり機能のコントロールが行われています。

さらに、身体の幹細胞の中には、特定の細胞だけでなく、あらゆる細胞に分化できるものも存在します。再生医療は幹細胞を用いることで、病気などで失われた組織や器官の修復や再生を目指すものです。

ES細胞とiPS細胞も幹細胞のひとつ

再生医療分野でよく聞かれる言葉に、「ES細胞」や「iPS細胞」があります。これらの細胞子も、ほかの細胞に分化できる能力を持つ、幹細胞のひとつです。ES細胞は、受精卵の胚から取り出した細胞を培養したものです。また、iPS細胞は、皮膚細胞などに特定の遺伝子を導入させた細胞です。ES細胞やiPS細胞は、幹細胞と同じ能力を持つものであり、再生医療での応用化が研究されています。

がん細胞にも存在する幹細胞

一般に、身体の組織は、ごくわずかな幹細胞が特定の細胞に分化することによって、成り立っています。たとえば、切り傷が自然に治るように、もともと細胞には、規則的に増殖するプログラムがあります。がんは何らかの原因で、細胞の増殖プログラムが異常を起こし、細胞が増殖し続けてしまう状態から起こると考えられていました。しかし近年、がん細胞にも、がん細胞を作る元となる幹細胞があることが明らかになってきました。

さらに、がん幹細胞が発見されたことで、がんにも通常の細胞と同じように、がん幹細胞を頂点としたがん細胞のグループあることも明らかになっています。具体的には、がんの組織は、無作為に増殖し続ける細胞の集まりではなく、がん幹細胞、がん幹細胞によって生み出されたががん細胞によって成り立っています。がん幹細胞から分化したがん細胞には、がん細胞の増殖を助ける役割のある細胞も確認されています。
また、がん幹細胞から分化したがん細胞は、単に増殖するだけなく、がん幹細胞が生き続けるためのサポートも行っています。特に、幹細胞から分化したがん細胞は増殖する能力が高いため、大きながん組織を作るため、がんが大きくなったり、ほかの器官に転移する要因となっています。

がん幹細胞が生まれる経緯

そもそもなぜがん幹細胞が生まれるのか気になる人もいるでしょう。もともと、がんは細胞の遺伝子が傷つくことで、異常に増殖するといわれてきました。がん幹細胞は、加齢や紫外線などによって遺伝子が傷つくことによって作り出されると考えられています。
がん幹細胞の発見によって明らかになったのが、炎症によりがん幹細胞が活性化されることです。ある臓器に炎症を起こると、免疫細胞や血液細胞が炎症部位に集まってきます。すると、これまで活動していなかったがん幹細胞が、活発化してがん細胞を分化させることが分かっています。

がん幹細胞で新たな治療の選択肢も

がん幹細胞で新たな治療の選択肢も
がんの治療によく用いられるものに、抗がん剤や放射線治療があります。これらの治療は、がん幹細胞から分化した、増殖力のあるがん細胞を標的にしている治療法です。そのため、がん細胞を作り出す元であるがん幹細胞は、ふつうのがん細胞に比べると、抗がん剤や放射線に対して抵抗性があることが分かっています。抗がん剤や放射線治療でがん細胞にダメージを与えても、しばらくするとがんが再発してしまうことは、よくみられることです。がんの再発は、がん幹細胞によるものではないかと考えられています。

がんを根本的に治療するためには、がん幹細胞の解明が重要となります。がんの治療には、がん細胞のみをターゲットに絞った治療法もあります。ここで、がん幹細胞がんに対して、重点的にダメージを与えることができれば、がんの治療は大きく変化するといえるでしょう。一方で、がん幹細胞は、すべての細胞のうち数パーセント程度といわれており、特定するための研究が行われています。近い将来、がん幹細胞を特定してそれを標的にした治療法が開発されれば、患者さんのがん治療の選択肢はさらに広がりを持つといえるでしょう。

まとめ

再生医療の治療で用いられる幹細胞は細胞のタネとなる役割があります。幹細胞の研究が進むにつれて、がん幹細胞の存在も明らかになるようになりました。今後、がん幹細胞をターゲットにした治療法の確立に大きな期待をしたいですね。


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