再生医療の豆知識

保険適用も間近?再生医療によるパーキンソン病の治療について

根治が難しいとされるパーキンソン病ですが、再生治療を用いた治験が始まっています。この記事では、パーキンソン病の特徴や現時点で行われている治療、そして再生医療による治療について紹介します。

パーキンソン病はどんな病気?

パーキンソン病はどんな病気?
パーキンソン病は脳の内部にある「中脳」の中の「黒質」と呼ばれる部分に異常なたんぱく質が増えて、ドパミンという神経細胞が少なくなることで起こる病気です。パーキンソン病には特徴的な症状があり、代表的な症状には次のものがあります。
・じっとしているときに手足がふるえる(安静時振戦)
・筋肉の動きがこわばる(筋強剛)
・動きが鈍くなる(無動)
・姿勢が傾きやすくなる(姿勢障害)

パーキンソン病の特徴的な症状である運動障害ですが、そのほかにも精神症状など多彩な症状がみられます。

パーキンソン病の治療について

パーキンソン病の進行を止めるための治療法は確立されておらず、症状をコントロールするための対症療法が行われています。現在行われているパーキンソン病の治療は、大きく分けて次の2つのものがあります。

薬物療法

薬の内服による、パーキンソン病によって減少したドパミンを補充する治療法です。適切な治療が行われれば、パーキンソン病による運動の症状の改善に役立ちます。

手術療法

パーキンソン病の手術療法では、手術で脳に電極を入れて刺激を与えることで、病気の症状の改善を図ります。手術療法による治療効果には個人差があります。

パーキンソン病とその予後について

パーキンソン病の症状は10~20年とゆっくりと進行していく病気です。また、予後についても誤嚥性肺炎や脱水などが起こらなければ、平均余命より数年程度短くなるのみです。そのため、パーキンソン病になってからも、10年程度はふつうに生活ができることがほとんどです。その一方で、パーキンソン病になってから十数年経過すると、日常生活が一人で行えずに、見守りや介助が必要となるケースが多くなります。特に、パーキンソン病で寝たきりになると、療養中の管理によって予後が大きく変わります。

パーキンソン病患者さんの未来を変える再生医療とは

パーキンソン病患者さんの未来を変える再生医療とは
パーキンソン病は、必ずしも命に大きくかかわる病気ではありません。しかしながら、発病から年数が経つにつれて、日常生活動作が自分でできなくなり、周囲の人の介助が必要になることがしばしばでした。また、パーキンソン病によって寝たきりになると、家族などの介護負担がかかるものです。
ここで近年、再生医療を用いたパーキンソン病患者さんの治療の試みがなされています。

再生医療とは、簡単に説明すれば機能の失われた組織や器官の再生を図る治療法のことです。再生医療の技術を用いることで、これまで根治が困難だった病気の治療ができるとして期待がされています。

パーキンソン病における再生医療の内容

再生医療を用いたパーキンソン病の治療では、病気で減少しやすいドパミン神経の移植が行われます。再生医療によるパーキンソン病の治療では、iPS細胞から再生したドパミン神経の元となる細胞を使用します。パーキンソン病患者さんの脳に、ドパミン神経の元となる細胞を移植することで、ドパミン神経が患者さんの脳内で定着して、病気の症状の改善を目指します。

再生医療に関するニュースでもよく見かけるiPS細胞ですが、よく知らないという人もいるでしょう。iPS細胞は、皮膚や脂肪などの細胞を採取して、特定の遺伝子を導入して作製する細胞です。iPS細胞は、細胞の元となる「幹細胞」の一種であり、さまざまな組織を再生する可能性を秘めています。

一方で、iPS細胞から作製したドパミン神経の元となる細胞を移植しても、パーキンソン病の原因である異常なたんぱく質の増殖を防ぐことができません。そのため、iPS細胞を用いたパーキンソン病の治療は、病気の原因そのものを解決するものではないといえます。しかしながら、再生医療を用いたパーキンソン病の治療法が確立されることで、患者さんや家族の治療の選択肢を広げることができます。パーキンソン病のさまざまな治療法をうまく組み合わせることで、患者さんの症状のコントロールもしやすくなるといえるでしょう。

なお、iPS細胞によるパーキンソン病の治療は、まだ治験段階ですが、数年内に保険適用される可能性が高いという専門家います。また、パーキンソン病のメカニズムが明らかになることで、根本的な治療が可能になる未来もゼロではありません。

まとめ

脳の慢性疾患であるパーキンソン病は、命に大きくかかわりのある病気ではありません。パーキンソン病そのものは、症状がゆっくりと進行していくので、時間の経過とともに患者さんや家族の生活に大きく影響を与えるものです。一方で、パーキンソン病の治療法は、原因を根本的に解決するものがなく、対症療法が主に行われています。現在、iPS細胞など再生医療を用いたパーキンソン病の治療は治験段階になります。しかし、今後再生医療を用いたパーキンソン病の治療の効果や安全性が保証されれば、治療の選択肢がさらに広がりをみせるといえるでしょう。

筋トレとAGAによるハゲとの関係は? 間違った筋トレはハゲを進行させる

ハゲになる原因はAGA以外にも加齢、薬剤、円形脱毛症など色々あります。
なぜ、筋トレがAGAを進行させるといわれているのかといえば、「筋トレが男性ホルモンを増加させる」からで、AGAとは「男性ホルモンつながり」が起因になっているようです。
筋トレがAGAを進行させる、ハゲの原因となる……これらのエビデンスを示す研究論文は現在のところ見当たらず、都市伝説ともいわれています。

そこで、筋トレはAGAを進行させるのかということだけでなく、筋トレ自体にハゲを誘発する要因があるのかを検討していきます。

筋トレはAGAを進行させない

筋トレはAGAを進行させない
筋トレは男性ホルモンであるテストステロンを増加させます。
AGAはテストステロンが5-αリダクターゼによってDHT(ジヒドロテストステロン)に変えられてしまい、このDHTの増加によって進行します。

テストステロンの増加でAGAが進行するとよく勘違いされるのですが、そうではなくDHTという男性ホルモンの増加でAGAが進行します。
進行するといっても、DHTが増加するだけでは進行しません。AGAは男性ホルモン受容体に結合することで発症します。

男性ホルモン受容体の前にDHTに変換する前のテストステロンとDHTが存在していたら、男性ホルモン受容体は迷わずにDHTと結合します。
なぜなら、DHTのほうがテストステロンよりも男性ホルモン受容体との結合力が10倍近く強いからです。この結合力の強さは遺伝が関与しているといわれています。

これでまず、AGAの進行はテストステロンが増える筋トレではないことがわかりましたね。
しかし、まだ、疑問は残っています。それは、テストステロンがDHTに変換するのはどんなときなのかということです。

それはテストステロンが減少したときです。テストステロンの減少を少しでも補充しようと活性の強いDHTに変換していきます。
先程から何度も述べていますように筋トレはテストステロンを増やすため、DHTに変換する必要がありません。
AGAの発症や進行にDHTが関与していることから考えると、テストステロンを増やす筋トレはAGA発症や進行を促すことには繋がりません。

では、筋トレ以外でテストステロンを増やす方法、あるいはテストステロンを減少させる原因を検討してみましょう。

テストステロンを増やす方法は身近にある

別に特別なことをするのではなく、カロリーを摂り過ぎることなく、バランスの良い食事をし、規則正しい生活習慣を心がけることだけでもテストステロンを一定量キープできるし、より心がけることで増加も可能です。

たとえば、テストステロンのような男性ホルモンを増やす効果のある亜鉛(例:牡蠣)。アルギニン(例:魚介類や牛肉)、ケルセチン(例:タマネギ)などを意識して摂るといいですね。
また、太ると男性ホルモンは減少し、薄毛になりやすいので要注意です。筋トレなど本格的な運動ではなくても、太らないように適度な運動も「あり」です。

過剰なストレスも男性ホルモンを減少させるといわれており、ストレスを溜めないリラックスした生活も重要です。

その他に、適度な飲酒は男性ホルモンを増加傾向に導きますが、過剰な飲酒、特にビールには男性ホルモンの分泌を抑制するナリンゲニン(フラボノイドの一種)が含まれています。
ロング缶3本以上、毎日飲んでいると、男性ホルモン減少の影響が出ると考えられています。

では、筋トレを男性ホルモンの面からではなく、筋トレによって筋肉が増えていく過程で薄毛やハゲに関与していることがあるのかを検討してみましょう。

筋トレする場合、栄養バランスを考えなければ、ハゲやすくなるかも

筋トレする場合、栄養バランスを考えなければ、ハゲやすくなるかも
薄毛やハゲは遺伝も大きく関与しているのは事実ですが、だからといって何も考えずに乱れた生活を送れば、遺伝の影響以上にまた、薄毛の遺伝体質でなくても薄毛は始まってしまうことでしょう。
筋トレも続ければ、確かに男性ホルモンは増えていきますが、栄養状態が悪いままに筋トレを続けると、筋肉を作る材料がなくなり、薄毛も進行します。

それはなぜでしょうか?
髪はタンパク質で作られていますが、筋肉もタンパク質が材料です。
筋トレをして筋肉を増やそうとするわけですが、そのとき、筋肉の材料であるタンパク質が必要になります。
筋トレを続けると、筋肉を構成している筋線維がダメージを受け、傷付きます。
傷ついた筋線維は休養や栄養を適度にとることで修復されますが、修復された筋線維は傷つく前よりも太くなっています。
この繰り返しで筋肉量が増え、筋肉質な肉体を得るのです。

傷ついた筋肉を修復するのに必要な主な栄養素はもちろん、タンパク質であることはいうまでもありません。

このときにタンパク質不足が続くと、髪に使われるタンパク質が筋肉の修復に使われてしまうことに。
生命の維持に、ほど遠い髪への栄養補給は後回しです。
発毛するためには、毛母細胞を頻繁に分裂(増殖)させなければいけません。分裂のエネルギー源もまた、タンパク質をはじめとするバランスの取れた栄養物質です。

従って、栄養、特にタンパク質不足状態で筋トレを続ければ、薄毛やハゲを誘発することになりかねません。
しっかりとタンパク質(場合によってはサプリメント)を十分に摂ることで、筋肉量の増加だけでなく、薄毛、ハゲ防止にも期待ができることでしょう。

ちなみに、筋肉を効率よく増やそうと、筋肉増強剤といわれるアナボリックステロイドを使い過ぎると、副作用として薄毛を進行させることになります。
できることなら避けたい薬剤であり、個人輸入などで入手して自己判断で使用するにはとても危険な薬剤です。
どうしても必要であれば、専門医の監視下で使用しましょう。

※アナボリックステロイド:タンパク質を合成するホルモン(タンパク同化ホルモン)。男性ホルモンの働きをもち、ドーピング薬物として知られている。
乱用で肝機能障害や薄毛などの副作用に見舞われる。

まとめ

いかがでしたか?
たしかに女性よりも男性のほうが男性ホルモンは圧倒的に多いため、男性ホルモンの多さが薄毛やハゲの原因と考えたくなるのも不思議ではありません。

AGAは一番、男性ホルモンが多い20代から減っていく30代あたりから発症(中には30代以下の発症もありますが)します。乱暴な言い方が許されるなら、この変動に反応した結果がAGAと考えることができます。

従って、筋トレに限らず、男性ホルモンを増やす所作は薄毛やハゲとは無縁だった20代の頃に近付こうとすることです。
筋トレは無酸素運動の一つで有酸素運動以上に心肺機能に負担をかけるため、やり過ぎて健康を損なうことがないよう、栄養を十分に摂りながら励みましょう。

ポストフィナステリド症候群 フィナステリドでAGA治療する人へ

PFS(ポストフィナステリド症候群)とは、フィナステリドを飲むのを止めているにもかかわらず、フィナステリドを飲んでいるときと同じような副作用症状(性機能低下や精子量減少など)が出てしまう病気のことです。

フィナステリドを飲んでいた全ての人がPFSになってしまうのではありません。むしろ、なってしまう人のほうが随分、少ないでしょう。
とはいえ、フィナステリドを飲んでいる人にとっては「PFSになる人」がいる以上、無関心ではいられません。

そこで、PFSにスポットを当ててみました。
まだ、はっきりとわかっていないこともありますが、フィナステリドを飲んでいる人、AGA治療をどのような方法でやろうかと思案している人は是非、最後まで読んでいただきたいと思います。

PFSが判明した背景

PFSが判明した背景
1997年、プロペシアがAGA治療薬としてアメリカ(FDA)で認可され、2005年には日本の厚生労働省も認可しました、現在では世界各国で使用されています。

ところが、2012年、アメリカのジョージワシントン大学のマイケルアーウイング博士がPFSの論文を発表しました。
これを重視したFDAはプロペシア製造元メーカーに投与中止後にも副作用のような症状が続くという警告、注意コメントを添付文書に掲載するよう指示を出しました。
少し遅れて、厚生労働省もフィナステリド関係製剤の添付文書に「市販後において、投与中止後も持続したとの報告がある」というコメントをつけ加えるように指示しました。

通常、薬剤による副作用の症状は投与中止後とともに消失していくことがほとんどです。
日本でもフィナステリド(商品名:プロぺシア)がAGA治療薬として初めて市場に出る前に当然、臨床試験を行いましたが、そのときはPFSを発見することができませんでした。

厚生労働省が添付文書に「市販後において、投与中止後も持続したとの報告がある」と追加掲載するようにわざわざ指示したことはまだ患者数が少ないとはいえ、そのままにしておけないと考えたということに他なりません。

では、なぜ、PFSになってしまうのか、はっきりわかっていない部分もありますが、研究論文や専門医の考察などを元にわかりやすく説明していきたいと思います。

PFSになってしまうメカニズム

PFSになる原因は、脳内の神経ステロイドの減少が原因という研究論文が発表されています。
今まで、ステロイドホルモンの一つである男性ホルモンは、脳からの指令を受けて精巣や副腎皮質で生成されると考えられていました。
ところが近年の研究で、脳内でも男性ホルモンが生成されることが解明されました。
脳内の神経ステロイドの総量がPFSに罹患した人は、そうではない人よりも減少していたということです。

また、正式な論文ではないのですが、脳内の神経ステロイドの減少と並行して、ホルモンのフィードバック機構に則った作用機序で考えた場合、PFSを起こすことは考えられるという内容が書かれた専門医のサイト(https://agablog.tokyo/finasteride/106)があります。
ご紹介しましょう。

ホルモンは体を一定の状態に保つ(恒常性)のに欠かせない物質

体の状態を常に一定に保つことは生命の維持に大変重要なことであり、このコントロールにホルモンが一役買っています。
このホルモン分泌のコントロールは、ネガティブフィードバック機構というシステムで行われています。

体内の男性ホルモンのテストステロン量が増加すると、脳から「作らなくてもいい」という指令がきます。
フィナステリドを飲み始めると、テストステロンからAGA原因物質といわれるDHT(ジヒドロテストステロン)への変換がストップするため、一時的にテストステロン量が増えます。
そして、テストステロンの血中濃度が上昇。さらにフィナステリドを飲み続けていると、恒常性を保つために「テストステロンは作らなくていい」という指示が脳から出されます。
やがて、テストステロンは作られなくなります。これがネガティブフィードバック機構です。
男性ホルモンを例にざっくりと大まかに説明してみましたが、つまり、フィナステリドを飲み続けることで、体内のテストステロン量が増加、よってテストステロンの体内生成が抑えられてしまうということです。
このようにフィナステリドを飲んでいる間であれば、体内でのテストステロン生成が抑制されたことで、性機能低下などの副作用は出たと納得できます。
ところが、フィナステリドを飲まなくなってもテストステロン欠乏症のような症状が出る、PFSの人がいます。
フィナステリドを飲まなくなれば、再びテストステロンがDHTに変換されるようになるため、体内のテストステロン量は減少していきます。
このとき本来なら、脳はテストステロンを作るように指示するはずです。

しかし、PFSの人は依然としてテストステロン欠乏の症状に悩まされています。先程、紹介させていただいたサイトの専門医はこの状態を「フィナステリドを飲み続けている間中、作れという脳からの指令は抑えられており、服用中止したからといってその強い抑制は簡単にはとれないだろう」と予測されています。
これらについてはそのサイトで、さらに詳しく掲載されています。

では、PFS改善のため、体外からテストステロンを補充すれば解決するのでしょうか?

テストステロン補充は専門医が行なわなければ危険

体外からのテストステロン補充は前述したネガティブフィードバック機構が動き出してしまいます。
とはいえ、テストステロン減少が原因の男性の更年期障害といわれるLOH症候群の治療には有効な治療法です。
テストステロン製剤は日本では医師が処方する薬であるため、一般人の手には入りません。そのため、個人輸入で入手し、素人判断で使用する人がいますが、非常に危険な行為です。
PFSかもしれないと感じたら、迷わず専門医の所に行きましょう。
テストステロン製剤補充にまでならず、生活習慣改善やさらなる時間経過で回復することもあるようです。

PFSになっても再生医療によるAGA治療ができる

PFSになっても再生医療によるAGA治療ができる
PFSになったからといってAGA治療を諦める必要はありません。フィナステリドはわずかとはいえ、性機能低下や精子量減少、うつ症状といった副作用が懸念されます。
当クリニックが行なう再生医療は男性ホルモンとは無関係であり、PFSでもAGA治療を行なうことができます。

まとめ

いかがでしたか?
PFSはまれとはいえ、特に子供が欲しいとお考えの人にはスルーできない疾患です。
PFSだけでなく、フィナステリドを飲んでいて、副作用に悩まされている人はぜひ当クリニックに御相談していただければと思います。

さい帯血が再生医療に役立つって本当?実際に行われている治療は?

これから出産予定の女性の中には、さい帯血について見聞きしたことのある人がいるのではないでしょうか。出産予定の女性でなくても、テレビのニュースなどで、さい帯血という言葉を耳にしたことのある人もいるでしょう。臍帯血は再生医療とも関連の深いものです。この記事では、臍帯血の特徴や再生医療への応用について紹介します。

そもそも、さい帯血とはどんなものか?

そもそも、さい帯血とはどんなものか?
さい帯血は、赤ちゃんが生まれるときのへその緒や胎盤に含まれている血液のことです。さい帯血というと、母親由来の血液と考える人もいるでしょう。しかし実際には、赤ちゃんは胎盤で、血液を介して酸素や栄養を受け取って、二酸化炭素や老廃物を受け渡しています。そのため、さい帯血はお腹の赤ちゃんの血液だけで成り立っているもので、母親の血液と混じることはありません。さい帯血は、近年、再生医療分野を中心に注目されています。

さい帯血が持つ特徴

出産時に採取できるさい帯血は、造血幹細胞という細胞を豊富に含んでいます。幹細胞は細胞の元となる細胞のタネのようなもので、臍帯血に含まれる造血幹細胞は、赤血球や白血球など血液の成分の元となる細胞です。さい帯血は、白血病など血液のがんの治療や、再生医療の研究で用いられています。

さい帯血が再生医療に活用される理由

近年、さい帯血の活用が期待されているのが、再生医療分野への応用です。再生医療とは、機能の失われた組織や器官の再生を図る治療法のことです。再生医療というと、特定の臓器を再構築するようなイメージがありますが、これらの治療法は研究段階であるのが現状です。現時点の再生医療では、細胞の元となる「幹細胞」を利用して、組織や器官の修復を促す治療法が行われています。造血幹細胞を多く含むさい帯血は、再生医療分野での活用が期待されているのです。

再生医療分野における、さい帯血の活用方法

再生医療分野において、さい帯血は実際にどのような役割を果たしているのでしょうか。すでに再生医療分野では。さい帯血によるいくつかの病気や症状の治療が研究されています。さい帯血を用いている病気や治療等には次のものがあります。
・脳性まひ
・低酸素血症
・免疫療抑制療法

さい帯血を用いた治療法のうち、いくつかの病気については積極的な治療が困難なものが含まれます。今後さまざまな研究を通して、さい帯血を用いた治療法が確立されれば、病気で苦しんでいる患者さんの未来も変えていく可能性を秘めているでしょう。

さい帯血はどのようにして投与される?

再生医療分野でも注目されているさい帯血ですが、どのように投与されるか気になる人もいるかもしれません。たとえば、白血病の治療でさい帯血が用いられる場合、造血幹細胞の移植前の処処置を行ったのち、点滴のような形式で投与されます。

さい帯血バンクについて

さい帯血バンクについて
実際に、再生医療などの研究や治療目的でさい帯血を保存する機関が「さい帯血バンク」です。さい帯血バンクには、大きく分けて公的なバンクと民間のバンクがあります。一般に、公的なバンクでは、他者の病気の治療に用いられるこを目的としており、さい帯血の保存は無料になります。一方、民間のさい帯血バンクは、将来、自分や家族が病気になったときに活用するために、さい帯血を保存します。なお、民間のバンクでさい帯血の保存する場合にには費用がかかります。いずれのさい帯血バンクを利用する場合は、指定の産婦人科の医療機関で、さい帯血を採取することが可能です。

保存したさい帯血は自分に利用できるか?

妊娠中の女性が、出産時にさい帯血を希望する場合、自分や家族の治療のために利用できるか気になる人もいるでしょう。自分のさい帯血を治療で利用するためには、民間のさい帯血バンクに保存する必要があります。

現在、さい帯血を利用した治療は、白血病など血液の病気の治療と、自由診療の治療に限られています。(なお、最近では個人クリニックなどで、さい帯血を利用した美容治療やがん治療を無届けで行うなどの事件も発生していますので、注意してください。)
一方で、今後、再生医療の技術が発展して、さい帯血の活用分野が広がれば、自分の保存したさい帯血を利用できる可能性もあるでしょう。出産を控えている女性が、さい帯血の保存を考えているのなら、目的や用途、費用について考慮することが大切です。

まとめ

時どき見聞きすることのあるさい帯血は、血液の元となる造血管細胞を豊富に含んでいます。そのため、さい帯血は血液の病気の治療だけでなく、再生医療の新しい治療の可能性があるとして期待されています。さい帯血これから出産を控えている女性で、さい帯の保存を希望している人は、自分や家族がどのような目的でさい帯血を利用したいのか明確にして、保存先のバンクを決めるようにしてください。

再生医療で使われる幹細胞とは?種類とその特徴

最近よく見聞きする再生医療のニュース。再生医療について興味を持っている人もいるのではないでしょうか?再生医療のなかでも重要となるのが、幹細胞です。この記事では、再生医療における幹細胞の役割やどのような種類があるのか紹介します。

再生医療ってこんな治療法

再生医療ってこんな治療法
再生医療は、病気や事故などで機能の失われた組織や器官の再生を目指す治療法です。埼栄医療というと、臓器移植のように先進の医療技術を用いて、再生した臓器の移植をイメージする人もいるでしょう。しかし、現時点では十分な機能を果たす臓器の再生は難しいとされています。また、臓器の再生を目指した治療法は、日本をはじめとする各国で研究がされている段階です。
実際の再生医療を用いた治療は、幹細胞と呼ばれる細胞などを移植して、機能の低下している組織の修復を図る方法です。以降では、再生医療のなかでも重要な役割を果たす幹細胞について説明します。

再生医療における幹細胞の役割

人間の身体を構成する最小の単位が細胞です。人間の身体は、数百種類、60兆もの細胞から成り立っているといわれています。身体を構成する細胞には、大きく分けて「体細胞」と「幹細胞」があります。体細胞は皮膚や臓器などを構成する細胞のことで、幹細胞は体細胞のように特定の細胞に分化していない細胞のことをいいます。
再生医療の要となるのが幹細胞です。古くなった皮膚がやがて垢となるように、人間の身体の細胞は常に生まれ変わっています。古い細胞から新しい細胞へと生まれ変わるときに、必要なのが幹細胞です。

幹細胞の名前の由来と特徴

幹細胞は、英語では「ステムセル(幹の細胞)」と呼ばれるように、細胞の元となる細胞です。実際に、幹細胞は木がさまざまな枝へと分かれるように、幹のような役割があるといえます。幹細胞は具体的には、次のような2つの特徴があります。
・さまざまな細胞に分化することができる(分化能)
・自分と同じ特性を持つ細胞を作り出すことができる(自己複製能)

さまざまな細胞になり、かつ自己複製が可能な幹細胞は、多くの再生医療の研究で用いられています。

幹細胞の種類にはどのようなものがある?

再生医療でも重要な役割を果たす幹細胞ですが、実はいくつかの種類があります。具体的には、幹細胞は大きく分けて「組織幹細胞」「多能性幹細胞」2つのタイプに分けられます。ここでは、それぞれの幹細胞については以下のようになります。

組織幹細胞

組織幹細胞は、特定の細胞に分化できる細胞のことをいいます。たとえば、造血幹細胞では血液の細胞に分化でき、神経幹細胞では神経の細胞に分化することができます。一方で、最近では、特定の組織の幹細胞でも、いくつかの細胞に分化できる可能性もあることが分かってきました。

多能性幹細胞

多能性幹細胞は特定の細胞ではなく、さまざまな細胞に分化できる幹細胞のことをいいます。医療ニュースでよく目にするES細胞やiPS細胞は、多能性幹細胞に当たります。ES細胞は、人間の胚から取り出した細胞を、特定の条件の下で培養したものです。一方、iPS細胞は、皮膚や脂肪などの体細胞に特定の介入をして培養したものです。どちらの幹細胞も人工的な方法で作られた多能性幹細胞です。

体性幹細胞のメリットにはどんなものがある?

体性幹細胞のメリットにはどんなものがある?
再生医療において、積極的な用いられているのが体性幹細胞です。再生医療で体性幹細胞を使うことはさまざまなメリットがあります。ここでは、体性幹細胞のメリットについて説明します。

機能が低下した組織や器官の修復が期待できる

体性幹細胞は人間の身体にも含まれている細胞で、機能の低下した組織や器官を効率的に修復する力を秘めています。多能性細胞であるES細胞やiPS細胞は、発生によってできたもので、ダメージを受けた器官などの修復は難しいとされています。その一方で、体性幹細胞は、臓器の再構築などは難しいとされています。

自分の細胞を使える

体性幹細胞は、患者さんは自分の細胞由来の幹細胞を使うことができます。皮膚細胞や脂肪細胞などから採取できるので、患者さんにそれほど負担はかかりません。また、培養などが不要なケースが多く、扱いやすいといえます。一方で、体性幹細胞は採取できる数に制限があるという欠点もあります。

倫理的な問題がなく、安全性が高い

受精卵の胚を用いて作製されるES細胞は、倫理的な側面からも議論が必要です。また、iPS細胞は、作製段階で遺伝子を傷つける可能性があり、がん化してしまう可能性があるといわれています。体性幹細胞は、自分の身体から取り出すため、倫理的な問題もなく、がん化の心配もありません。

まとめ

再生医療で用いられている幹細胞にはいくつか種類があります。それぞれの幹細胞には特徴があり、メリットやデメリットがあります。再生医療の治療でどのような幹細胞を使われているか確認してみるのも、理解が深まりますね。

骨髄移植は先駆けだった!造血幹細胞移植と再生医療について

ときどきニュースでも見かける再生医療のお話。再生医療というと、新しい治療法のイメージがありますが、昔から血液疾患の治療法として確立している治療法であることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。この記事では、再生医療における血液の病気における再生医療を用いた治療法を紹介します。

再生医療とはどんな治療法か?

再生医療とはどんな治療法か?
再生医療は機能が失われた組織や器官を修復する治療法です。器官の修復というと、再生医療の技術を用いて、人間の臓器を再生するというイメージを抱く人もいるでしょう。実際に、このような治療法を実現するために、世界中で研究が行われていますが、実際に行われているものではありません。
現在の再生医療で行われているのが、さまざまな細胞に分化する「幹細胞」という細胞を用いる方法です。ときどきニュースなどで耳にする「ES細胞」や「iPS細胞」も、実は再生医療とかかわりのある幹細胞です。

血液の病気と再生医療

新しい治療法のイメージがある再生医療ですが、以前から血液の病気には再生医療の技術が用いられていました。再生医療を用いている血液の病気の治療法が、骨髄移植です。骨髄移植は、ドナーの造血幹細胞を移植する方法で、白血病など血液のがんに用いられる治療法です。

造血幹細胞と骨髄移植

造血幹細胞とは、血液の成分である赤血球や白血球の元となる細胞です。血液のがんで行われる骨髄移植は、造血幹細胞を含むドナーの骨髄液を点滴によって投与します。骨髄移植の具体的な流れは、次のようになります。
1. 最初に抗がん剤や放射線治療により、病気の原因となる血液のがんを破壊して、骨髄の中を空の状態にする。
2. 骨髄にドナーの造血幹細胞を移植して、骨髄の機能を回復させる。

骨髄移植は、機能の失われた器官の回復を行う点で、広い意味で再生医療といえるでしょう。

骨髄移植で用いられる造血幹細胞

骨髄移植で用いられる造血幹細胞
再生医療で細胞の移植する場合は、自分の細胞を使う「自家移植」と、他人の細胞を使う「他家移植」があります。骨髄移植はドナーから採取した骨髄液を移植する他家移植となります。ドナーから骨髄移植を採取する方法は、安全に行われているものの、やはりご本人の負担がかかるものです。
具体的には、ドナーから骨髄液を採取するには、全身麻酔をかけて行われます。骨髄を採取するための手術時間は1時間半程度と決して長い時間を要するものではありません。一方で、採取する骨髄液は500~1000mlにもなるため、穿刺が数十回に及ぶこともあります。このことを考えると、骨髄移植のための骨髄穿刺は、ドナーにも負担がかかるものといえるでしょう。

造血幹細胞移植には赤ちゃんの臍帯血が使える?

血液のがんなどの治療で、骨髄移植とは別の方法で造血幹細胞を移植する方法がさい帯血を用いる方法です。さい帯血は、赤ちゃんが生まれるときにへその緒から採ることのできる血液です。さい帯血には、血液の元となる造血幹細胞が豊富に含まれており、再生医療分野を中心に注目を集めています。一方で、さい帯血を採取できるのが出産時に限られていることや、1回に採取できる量が少ないというデメリットがあります。

造血幹細胞移植で注意すべきこと

白血病など血液のがんの治療で行われている造血幹細胞の移植ですが、骨髄移植にしろ、さい帯血移植にしろ、移植を行う患者さんの身体の中で定着して、新たに血液を作り出す必要があります。これに対して、移植した造血幹細胞が定着せずに、患者さんの免疫機能により異物として判断されることがあります。移植した造血幹細胞が異物と判断されると、体内の免疫細胞によって排除される作用である「拒絶反応」が起こります。
造血幹細胞にしろ、細胞や臓器の移植によって起こる拒絶反応は、患者さん自身の命を脅かしてしまうことがあります。骨髄移植やさい帯血移植による造血幹細胞の移植では、あらかじめ患者さんとドナーの細胞の型が合うかの確認がされます。一方で、患者さんに合う型を持つ造血幹細胞を選びやすくするためにも、より多くのドナーの血液があることが重要といえるのです。

再生医療の発展で期待できるもの

再生医療の先駆けとなる造血幹細胞の移植ですが、再生医療のさらなる発展によってドナーの血液を集めることが期待されています。それは、造血幹細胞を大量に培養するという試みによるものです。血液のがんなどの治療で用いられる造血幹細胞移植の歴史は50年ほどになりますが、未だに人間の身体の外で培養することに成功していません。
今後、再生医療の発展にともなって、造血幹細胞を大量に培養することに成功すれば、患者さんに大きなメリットをもたらすことでしょう。また、現段階で造血幹細胞の移植は、血液のがんなど特定の病気に限られて行われています。もし、造血幹細胞の大量に培養に成功すれば、そのほかの症状の治療にも活用できることが期待できるかもしれません。

よく見る再生医療。具体的にどのような種類がある?

近年ニュースでもよく見かける再生医療。再生医療というと、組織や器官の再生を図る治療というイメージのある人もいるでしょう。今は難しく感じる再生医療のニュースですが、自分や家族が病気になったときに、治療法の選択肢のひとつとなることも。ここでは、再生医療には具体的にどんな方法があるのか、分かりやすく説明します。

そもそも再生医療とはどんな治療法なのか?

そもそも再生医療とはどんな治療法なのか?
再生医療は、病気や事故などで機能が低下したり失われたりした組織や器官を再生する治療のことをいいます。ちょっとした切り傷が、しばらくすると治っているように、生物にはもともと自然治癒力があります。一方で、脳や心臓などの特定の器官のように、一度機能が低下すると、回復できないものもあります。病気などにより、組織や器官が回復できない場合は、患者さんの治療は症状のコントロールが主体になります。このように、医療技術が急発展しているといわれる現代でも、根治が難しい病気や症状があり、患者さんやその家族の生活に大きな影響を与えるといえます。

再生医療にはどのような種類がある?

組織や器官の再生を目指す再生医療ですが、特定の臓器を再生してそれを移植するものと考える人もいるでしょう。特定の臓器を再生するという治療法は、将来の再生医療で期待できる治療法ですが、現時点では実現していません。現在、再生医療で行われている治療法には、大きく分けて次の2つがあります。

幹細胞などを移植して、特定の組織や器官の機能の回復を図る方法

細胞の修復や再生を促す幹細胞という細胞を移植することで、機能が低下した組織や器官の再生を促します。再生医療で重要となる要素が「幹細胞」です。
人間の身体には60兆もの細胞で成り立っていますが、大きく分けて「体細胞」と「幹細胞」に分けられています。体細胞は、皮膚細胞などの特定の細胞に分化した細胞のことをいいます。一方、特定の細胞に分化していない細胞が幹細胞です。幹細胞はある細胞やいろいろな細胞に分化できることで知られています。幹細胞による脳の神経細胞の再生など、脳外科分野でも治験が行われています。
また、幹細胞とは別に細胞の成長を促すたんぱく質を投与して組織や器官の修復を図る治療法も、いくつかの診療科で試みが行われています。たとえば、一例として挙げられるのが、整形分野におけるじん帯や軟骨組織の再生です。じん帯や軟骨組織の再生は、血液の血小板という物質から特殊なたんぱく質を抽出したものを投与する方法が採られています。

患者さんから幹細胞を取り出して再生させた組織を移植する

再生医療でイメージされやすいのが、特定の組織や器官を再生したものを患者さんに移植する方法です。現時点では、再生医療を用いた臓器の再生は容易なことではありません。これは、ひとつの臓器が血管や筋肉などさまざまな組織で成り立っており、臓器が立体的な構造をしているためです。一方で、現代は3Dプリンティング技術が発達しており、再生医療を用いた臓器の再生も、より現実的になっているという見方もあります。
たとえば、最近の例では、「ミニ肝臓」といわれるように普通の肝臓よりもサイズが小さめの肝臓の再生に成功したとの発表がされています。また、幹細胞を体の外で培養する場合、実際に十分な機能を発揮するためには、大量の培養が必要となります。そのため、最近ではブタなどの特定の動物の身体の中で、幹細胞を元に作った臓器を育てる研究も進められています。ただし、現在の日本では、再生医療を使って動物の体内で人間の臓器を作ることは、倫理的な観点から未だ行われていません。今後、海外などで再生医療を用いた人間の臓器の再生した報告がある可能性もあるでしょう。

再生医療のこれから

再生医療のこれから
今後、再生医療がさらに発展すれば、幹細胞を元に機能性のある組織や器官を再生して、患者さんに移植するという治療法も確立されるかもしれません。再生医療の大きなメリットが、自分の細胞を使って、組織や器官を再生する可能性があることです。今後さらに、再生医療を用いた治療法が確立されれば、自分の細胞を使って組織や器官を再生できる未来もそう遠くないでしょう。また、再生医療の技術が確立されれば、自分以外の健康な人の細胞を使って、組織などを大量に培養することも夢ではありません。再生医療というと、なにか専門的な医療ニュースのように見えますが、患者さんの治療の未来を変えるともいえるでしょう。

まとめ

再生医療は、機能が失われた組織の回復を図る治療法です。具体的には、幹細胞を移植して機能の回復を図る方法と、幹細胞から特定の組織を再生したものを移植する方法があります。現在、再生医療にまつわる研究が世界各国で行われおり、すでに実用化されている治療法もあります。再生医療を用いた治療法が確立されれば、これまで治療が困難だった患者さんへもアプローチができ、社会的にも大きな影響を与えるものです。

再生治療を用いた心臓病の治療と研究内容

年々、日本の人口は少なくなっているなかで、増加の一途をたどっているのが心臓病です。生物の生命維持に欠かせない器官である心臓は、病気により機能が失われることで、患者さんの生活に大きな影響を与えるものです。近年、心臓病の新しい治療法として、再生医療を用いた治療法が期待されています。この記事では、心臓病における再生医療のポイントや研究についてご紹介いたします。

日本における心臓病の現況

日本における心臓病の現況
心臓は全身に血液を送り出す役割のある器官です。近年の高齢化や食生活の欧米化にともなって、心臓病を抱える患者さんの数は増え続けています。心臓病になると、心臓の機能が失われるため、薬やペースメーカ―の埋め込みなどによる治療が必要となります。また、症状が重い場合では、人工心臓や他人の心臓を移植する移植治療も必要となるでしょう。

心臓は細胞の修復が難しい

転んでひざを擦りむいても、しばらくすると元通りになることは誰もが経験したことがあるのではないでしょう。細胞は古い細胞が新しい細胞に置き換わることで、自己修復させる機能があります。
一方で、いくつかの体の器官の中には、病気やケガなどで損傷しても、自己修復が難しいものがあります。なかでも、心臓はいったんダメージをうけると、自己修復ができず、機能が失われてしまうことで知られています。特に、心臓は生命維持に欠かせない器官であるため、機能不全に陥ることで、患者さんの生活にも大きな影響を与えるものです。再生医療を用いた心臓病の治療では、病気などにより失われた心臓の機能を取り戻すことが目的されています。

心臓の病気における再生医療のポイント

再生医療では、あらゆる細胞に分化する幹細胞を用いて、組織や器官を再生して移植したりする治療法です。よく似ている治療法に移植治療があります。こちらは、ドナーである他人の臓器を患者さんに移植するものです。
日本では、臓器移植法が制定されてから20年以上経ちました。しかし、日本における心臓の移植治療は年間数十件程度であり、深刻なドナー不足の状態です。また、仮に心臓の移植治療が受けられたとしても、自分以外の人の臓器を移植することによる、拒絶反応のリスクもゼロでありません。
このような状況のなか、新たに注目されているのが再生治療を用いた心臓病の治療です。
一方で、実際に再生医療を用いた治療法は、まだまだ研究段階のものが多いのが現状です。特に、心臓など生命維持に不可欠な臓器の再生は、再生医療の技術のなかでも難しいとされています。心臓病では、心臓の血管が詰まったり、心臓の筋肉である「心筋」の働きが低下したりすることで起こるものです。そのため、心臓病治療に向けた再生医療では、心臓の血管や心筋の再生に重点を置いた研究が進められています。再生医療を用いた心臓病の治療が確立されれば、これまで治療が困難だった患者さんに、希望を与えるといえるでしょう。

再生医療を用いた心臓の治療

再生医療を用いた心臓の治療
現在、再生医療の研究では、心臓病の治療への貢献を期待して、さまざまな再生医療の研究が行われています。ここでは、日本で行われている再生医療を用いた心臓病治療の研究内容について、いくつかご紹介します。

iPS細胞を用いた心臓病の治療法

再生治療のニュースでもよく耳にするiPS細胞は心臓病の治療にも用いられることが期待されています。iPS細胞について簡単に説明すると、皮膚細胞などを採取して、特定の条件化で細胞の再プログラミングをして作製します。iPS細胞はさまざまな細胞に分化でき、なおかつ無限に増殖できるという特徴を持つ細胞です。
とはいえ、心臓の筋肉である心筋を再生するにも、1億もの細胞を必要するため、決して容易なことではありません。国内の大学では、iPS細胞から心筋を再生するための方法を開発しており、今後の心臓病の治療に大きな変化をもたらすことが期待されています。また、iPS細胞を用いて心筋が再生できれば、そのまま移植するだけでなく、患者さんに適した薬を見つけるのにも役立つと考えられています。

心臓の血管の再生を促す治療法

再生医療を用いた治療には、すでに医療現場で実際に使用されているものもあります。なかでも、心臓病の治療に用いられているのが、「細胞シート」といわれるものです。細胞シートとは、患者さんの足などの筋組織を採取して、シート状にしたものを、手術で心臓に張り付けます。筋肉や細胞は「サイトカイン」と呼ばれる、組織の修復を促すたんぱく質が分泌します。細胞シートから分泌されるサイトカインによって、心臓の血管の再生が促される仕組みです。

まとめ

これまで、重症になると治療が困難とされていた心臓病。しかし近年、再生治療を用いることで、心臓病の治療に新たな可能性が生まれています。現在、心臓病に打ち勝つための、再生医療の技術の進歩を期待したいですね。

再生医療の倫理的問題について

ひと昔前には、臓器移植にともなう法律の制定にともなって、各界の専門家が議論を重ねたことは、記憶にある人も多いのではないでしょうか。新しい治療法が確立されるときに、注目されるのが提供される医療に倫理的問題がないかどうかです。この記事では、再生医療にまつわる倫理上の問題点について紹介します。

臓器移植でも倫理的問題が焦点

臓器移植でも倫理的問題が焦点
今からおよそ20年前の1997年、脳死患者さんから取り出した臓器を移植できる臓器移植法が制定されました。脳死とは、脳の機能が停止している状態であり、なんらかの医療の介入があれば、脈や呼吸がみられる状態です。臓器移植法の制定に関して論点となったのが、「脳死を人の死とするかどうか」でした。
現在、臓器移植法は改定を経て、本人の意思にかかわらず遺族が望めば、臓器の移植が行えるとしています。しかしながら、法律の改定法後、臓器移植の件数は増加傾向にあるものの、まだまだ一般的な治療といえる状況ではありません。臓器移植は、脳死後に臓器を提供するため、一人ひとりの死生観が大きく影響していることが考えられます。このように、新しい治療法を確立するには、単に医療技術的な問題だけでなく、倫理的な問題がないかなどの問題も検証する必要があります。再生医療の倫理的問題点についても、いくつかみていきましょう。

ES細胞で問われた倫理的問題点

再生医療でよくでてくるワードのひとつにES細胞があります。一般に体の細胞は特定の細胞に分化するという特徴があります。一方、ES細胞は、さまざまな細胞に分化できる能力を持ち、なおかつ無限に増殖できるという特徴があります。再生医療を躍進させるものと期待されたES細胞ですが、実用化するには倫理的問題点が懸念されていました。これは、ES細胞は、受精卵を壊すことによって作られるものだからです。ES細胞は、人間などの受精卵の一部を取り出し、培養することで作られます。ここで言う、受精卵の一部を取り出すというのは、受精卵を壊すことを意味します。
ES細胞の研究では、不妊治療で行われる体外受精で、母体に戻されなかった分の受精卵(医学的には余剰胚といいます)。しかしながら、余剰胚も母体に移植すれば、妊娠の可能性はあります。そのため、欧米では再生医療においてES細胞を使うことは、宗教界を中心に強い反対が起こっていました。実際に、アメリカでは大統領により、ES細胞に関する法令が不成立になったり、各地でも反対の運動が起きていることで知られています。
一方、日本はどうかというと、受精卵への介入について、それほど大きな反発はなかったものの、ES細胞の取り扱いは海外と同等の水準となっています。たとえば、日本ではES細胞の研究は国内のわずかな機関のみで行えるものであり、使用できる受精卵の日数についても決まりがあります。

iPS細胞の登場で、再生医療の倫理的問題が解決?

iPS細胞の登場で、再生医療の倫理的問題が解決?
再生医療にかかわる倫理的問題の解決の糸口になるとして、注目されているのがiPS細胞です。iPS細胞について、インターネットなどの医療ニュースでも、時々取り上げられるので、ES細胞と同様に名前を聞いたことのある人もいるでしょう。
iPS細胞も、さまざまな細胞に分化でき、人工的に作られます。具体的な方法としては、人間の皮膚の脂肪などから取り出した細胞に、特定の遺伝子を組み込むことで作ります。iPS細胞の作成は自分の細胞を使うことができます。ES細胞で用いられる受精卵のように、少なくとも生命の始まりとなる細胞を犠牲にする必要はありません。このように、iPS細胞の登場は、ES細胞で課題となっていた倫理的問題を解決したといえるでしょう。

再生医療の倫理的問題は解決済みなのか?

iPS細胞の登場で、再生医療の倫理的問題が解決したのはほんの一部です。近年では、iPS細胞を使って、複数の動物をかけ合わせた新種の動物が作り出されています(医学的にキメラといいます)。また、臓器移植における慢性的なドナー不足から、再生医療を用いて臓器を大量に作れるという可能性もゼロではありません。
日本では臓器移植法の成立時に、さまざまな審議が行われていました。まさに今に再び、再生医療を通して、医療の持つ倫理的問題に突き当たっているといえるでしょう。

まとめ

再生医療の治療法のなかには、臓器移植のときに問われたような「神の領域」と呼ばれる部分の検証を必要とするものがあります。再生医療の治療法のなかには研究段階のものが多く、今後さらに検証を重ねていく必要があるものです。再生医療をはじめとする医療技術は、日進月歩で発達していますが、倫理的問題を疎かにするべきではありません。特に、再生医療の倫理的問題の検証については、科学者によって行われるのではなく、さまざまな分野の専門家や私たち一人ひとりの意見が大切となります。今回を機に、再生医療の恩恵を期待するとともに、倫理的な観点から自分なりの意見を考えてみるのもよいですね。

今さら聞けない!ES細胞とiPS細胞の違いは?

近年、一般の方でも再生医療に関するニュースですが、なかでもよく耳にするのが、ES細胞やiPS細胞です。ES細胞やiPS細胞については、なんとなくスゴイというイメージはあるものの、実際にどのようなものか知らない人も多いのではないでしょうか?この記事では、再生医療でも取り上げられることの多いES細胞やiPS細胞の特徴やその違いについて紹介します。

ES細胞とはどのようなもの?

ES細胞とはどのようなもの?
ES細胞は、さまざまな細胞に分化することができる細胞です。通常、ある1つの細胞は、特定の細胞にのみ分化できるという特徴を持っています。一方、ES細胞は、あらゆる細胞に分化でき、なおかつ無限に増殖できるという特徴を持っています。ES細胞を使えば、特定の細胞や器官の修復をできる可能性があることから、再生医療分野で大きな注目を集めているのです。

ES細胞はどのようにして作られる?

あらゆる細胞に分化できるという万能さを持つES細胞ですが、どのようにして作られるのか気になる人もいるでしょう、ES細胞は、生命の源である受精卵を用いて作られます。受精卵は精子と卵子が結合することでできますが、ES細胞は受精卵が発育した「胚」を加工して作られます。ES細胞を作るための具体的な方法は、受精から1週間程度経った胚の一部を取り出し、特殊な環境のもとで培養することで作られます。

ES細胞の問題点

ES細胞を作るためには、ひとつの生命となる胚を犠牲にしなければならず、倫理的側面から検討が行われています。特に、欧米をはじめとするキリスト教を中心としている国々では、ES細胞の作成は問題があるという意見も上がっています。一方、日本ではどうかというと、宗教的な観点からのES細胞の取り扱いに大きな反対の声が上がっているわけではありません。しかしながら、受精卵を犠牲にしなければいけないES細胞の作成は、国内でも慎重な議論をすることが求められるものです。

このような状況下で、日本のES細胞は、不妊治療で使用しなかった分の胚や人工妊娠中絶で採取された胚などが、研究に使用されています。また、ES細胞の研究場所も国内で限定して行われています。

iPS細胞とはどのようなもの?

ES細胞と並んでよく耳にするのがiPS細胞です、iPS細胞もES細胞と同じように、さまざまな細胞に分化する能力と、無限に増殖する能力を持つ細胞です。ES細胞はとiPS細胞は互いにどのような違いがあるかというと、作成方法が大きく異なります。ES細胞は、前述したように、受精卵の胚を用いて作られます。一方、iPS細胞は、体の皮膚細胞などから、特定の因子を追加して、遺伝子の再プログラミングします。iPS細胞による再生医療を行う場合、iPS細胞の作成そのものは、自分の細胞を使うことができます。そのため、受精卵の犠牲が必要であるES細胞にかかわる、倫理的な問題はクリアしているといえるでしょう。
また、自分の細胞から作り出すことのできるiPS細胞は、移植時に拒絶反応を起こしにくいといえます。

iPS細胞の問題点は?

ES細胞よりも比較的扱いが容易と考えられているiPS細胞ですが、問題点がないわけではありません。移植したiPS細胞が腫瘍化する可能性があるといわれています。もともと細胞は遺伝子によってプログラミングされており、腫瘍はプログラムに異常をきたすことで起こると考えられています。iPS細胞の作成時には、遺伝子を傷つけてしまうリスクがあるため、再生治療でiPS細胞を使うことで、移植したiPS細胞が腫瘍のようになってしまうのではないかと危惧されています。
そのほかにも、移植したiPS細胞が特定の細胞に分化しなかった場合、腫瘍化する可能性があることも指摘されています。
最近では、iPS細胞の作製するときの因子を腫瘍化しにくいものにしたり、未分化の細胞にならないように選別する方法などが開発されています。iPS細胞を使った治療が確立されるには、きちんと安全性が確保されているうえで、行われる必要があるといえます。

再生医療においてES細胞とiPS細胞が果たす役割

再生医療においてES細胞とiPS細胞が果たす役割
さまざま細胞に分化できるES細胞とiPS細胞は、特定の組織や器官に再生する可能性を秘めています。現時点では、ES細胞やiPS細胞で臓器を再生する試みがされている段階であり、実際の治療として取り入れられるのは、もう少し先の未来になるでしょう。一方で、ES細胞やiPS細胞による再生治療が確立されれば、これまで治療が難しかった病気の治癒の可能性も期待できます。また、ES細胞やiPS細胞を用いた再生医療の安全性の確保や、医療倫理の問題など、解決すべき事項がいくつかあります。再生医療による明るい未来を据えて、私たち一人ひとりがES細胞やiPS細胞のニュースに、関心を持つことはとても大切だといえるでしょう。

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