再生医療の豆知識

白髪の人はハゲない!?こんな都市伝説を吹き飛ばすバルジ領域の話

2019年01月04日

今回は再生医療に欠かせない幹細胞の話です。
バルジ領域が発見され、研究が進んだことで「白髪の人はハゲない」という都市伝説をひっくり返すような内容の研究報告が以前、ありました。
つまり、「白髪の人もハゲる」ということです。
このような真相解明は、髪の再生医療をさらに進めるものと期待されています。

では、「白髪の人はハゲない」という俗説を覆して「白髪の人もハゲる」という真説をわかりやすく説明いたします。

バルジ領域とは?

バルジ領域とは?
バルジ領域は毛乳頭などよりも上部、頭皮に近い場所に位置しています。今回の話の主役となる毛包幹細胞や色素幹細胞が隣接して存在する場所です。
(毛乳頭:毛となる毛母細胞に栄養物質を運んだり、発毛のコントロールを行う)

毛包幹細胞と色素幹細胞

再生医療の柱でもある幹細胞は体のどこにでも存在し、もちろん、髪にもあります。
バルジ領域にある毛包幹細胞から髪を作る角化細胞ができ、色素幹細胞からは髪の色になる色素細胞ができます。

毛包幹細胞には17型コラーゲンという物質が存在しています。
この17型コラーゲンこそが、白髪にならないようにすると同時に髪が抜けないようにするメカニズムになくてはならない物質です。

要するに、17型コラーゲンの研究によって「白髪の人はハゲない」という都市伝説を真っ向からの反論を可能にしたということです。この研究は東京医科歯科大学の西村栄美教授らのグループの研究です。

これから17型コラーゲンが、毛包幹細胞や色素幹細胞をどのように操って白髪と脱毛に関与しているのか、検討してみましょう。

17型コラーゲンが減少、消失すると白髪と脱毛が同時におきる

毛包がミニチュア化して起きる薄毛や脱毛はAGA特有の現象ではありません。老化などのDNA損傷によってもミニチュア化で薄毛や脱毛がおきます。そして若年性AGAではおこりにくい白髪も老化によって発生します。
そこで、白髪や脱毛の発生を抑える17型コラーゲンの働きをみていきましょう。

17型コラーゲンの働き

17型コラーゲンの働き
髪は何度、抜け落ちても毛包幹細胞のおかげで発生し続け、色素幹細胞のおかげで常に黒い色素がついた髪になります。
17型コラーゲンは毛包幹細胞の維持になくてはならない物質なのです。
そして、毛包幹細胞の隣に存在している色素幹細胞の維持にも欠かすことができない物質であることが西村栄美教授の研究グループで解明されました。
17型コラーゲンの働きを抑えたマウスを観察していくと、だんだん毛が脱色、そのうち毛も全て抜けてしまったということです。
毛包幹細胞にあるべき17型コラーゲンを失い、隣の色素幹細胞の維持ができなくなるだけでなく、毛包幹細胞の維持もできなくなってしまったのです。
その結果、両方の幹細胞の減少、消失によって色素細胞や角化細胞が作られなくなり、マウスの毛が脱色し、やがて毛が抜けおちていったというわけです。

ここで、考えなくてはいけないのが個人差です。たとえば、白髪の人はハゲないという俗説のような人も(やがては髪も抜けるでしょうが)、いることでしょう。

白髪でも髪が抜けない人がいる?

それは、毛包幹細胞と色素幹細胞の持つ力の強弱が原因と西村教授は話しておられます。
通常であれば、発毛の準備をしようと、毛包が下に伸び、黒い髪を出すために色素幹細胞から色素細胞が作られ、発毛段階に入った毛母にまで届けられます。

しかし、老化などによるDNAの損傷で色素幹細胞が維持できなくなると、色素細胞が作られないため、毛母にまで行く色素細胞はありません。
要するに、毛包幹細胞は維持されていても色素幹細胞が維持されなくなったために、白髪にはなったけれど、髪は抜けないという現象が起こるのです。

老化によって分解、減少する17型コラーゲン 代用できる物質はある?

西村栄美教授によると、17型コラーゲンに代わるものを作ることは現在の技術ではできないとのこと。

とにかく減らさないようにしていくのが精いっぱいのようです。
17型コラーゲンが分解してしまう一番大きな原因はDNAに傷がつくことですが、その傷を治す酵素に好中球エラスターゼという酵素があります。
この酵素が何かの拍子に毛包幹細胞内にできてしまうと、17型コラーゲンが壊れてしまうことが予測されるのです。
好中球エラスターゼは強いたん白分解酵素の一つで、幹細胞を維持していた17型コラーゲンを切断してしまうためです。

そこで西村教授たちは17型コラーゲンが減少しないように好中球エラスターゼの分解を抑える方法を現在検討していて、その他、17型コラーゲンが減少しない方法、増える方法などを模索、研究中だそうです。

再生医療で17型コラーゲン減少を止めることができる?

再生医療で17型コラーゲン減少を止めることができる?
年齢とともに幹細胞も減少していきます。
幹細胞の減少はそのまま17型コラーゲンの減少を意味します。
体内に残存している幹細胞を維持することで17型コラーゲンの減少を食い止めればいいのです。
幹細胞を培養して増やす再生医療は、17型コラーゲンの減少を食い止めるのに最適な方法といえそうです。今後の再生医療の動向が期待されます。

まとめ

いかがでしたか?
年を取らない人なんて誰一人いません。加齢に関しては個人差こそあれ、全ての人に平等にあります。
白髪や脱毛もいつかやってくる老化現象ですが、少しでもその到来を遅延させる方法があれば、やってみたいと誰もが思います。
残念なことに、17型コラーゲンの代用になるものはまだないとのこと。
しかし、再生医療で幹細胞を減らさず、維持できればと、さらなる研究に期待は膨らみます。


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