再生医療の豆知識

朗報!毛髪の数を自分の細胞で増やす京セラ、資生堂の再生医療

2018年12月01日

現在、人間のあらゆる内臓、器官の治療に再生医療の立場から研究、応用されることが多くなっています。
その再生医療が今までにない劇的な効果を生み出すと期待され、事実、そのような方向にすでに進んでいる分野もあります。
これからご紹介する3つの近未来型毛髪再生医療は実現間近といわれ、AGAに悩む人たちに希望をもたらしています。また、これらの毛髪再生医療は男性だけでなく女性の薄毛、脱毛にも効果的と考えられています。

1 資生堂:毛髪の成長に欠かせない細胞(毛球部毛根鞘細胞)を培養する

毛髪の成長に欠かせない細胞(毛球部毛根鞘細胞)の培養
毛球部毛根鞘細胞は、毛乳頭よりもさらに下部にある毛球部毛根鞘にある細胞です。毛髪は生えてやがて脱毛というサイクルを繰り返します。抜けたあと、再び発毛するためには、再度、毛包が活性化される必要があり、毛球部毛根鞘細胞は毛包の活性化を促進ささせる働きがあると考えられています。

この毛球部毛根鞘細胞を使って、カナダのレプリセル社から技術導入した毛髪再生医療技術(RCH-01)を施行します。
再生医療には、本人の細胞を活用する自家細胞移植と本人以外の細胞を活用する他家細胞移植があります。資生堂がレプリセル社から導入したのは拒絶反応が抑えられ、副作用も最小限に留められる自家細胞移植です。

施術方法

AGAの人の後頭部の有毛部分を5mm、切除します。切除した頭皮から毛球部毛根鞘細胞を取り出し、レプリセル社から導入した技術で培養した後、AGAの人の病変部位(脱毛部位等)に戻します。(資生堂の文献には「注入」と記載)
ただ、頭皮の切除や培養した細胞を含んだ頭皮を当人に戻す行為は医療行為となるため、医師が行います。

では、なぜ、後頭部の毛髪を採取するのか、髪があればどこでもいいのではと思いませんか?
実は、これ、ちゃんと理由があります。
前頭部、頭頂部は男性ホルモン受容体が多いため、ハゲやすく、後頭部は男性ホルモン受容体が少ない、あるいは無いため、抜けにくく、毛髪もかなり頭皮に留まっていることができると考えられているからです。

すでに日本でも行なわれている自家植毛術という施術法があります。
これは、後頭部の毛包などを含む頭皮を切除して脱毛部位に移す方法です。
この場合は毛髪の本数が増えたのではなく、たくさん毛髪がある部位から脱毛部位に髪を移動させて、頭部全体に髪を平均的に行き渡らせる方法です。
そのため、髪の本数に変化はありません。
資生堂が実現しようとしている施術法は培養させた細胞を脱毛部位に戻すため、毛髪の数が細胞分裂のたびに増加していきます。
また、自家植毛術に比べ、切除範囲が小さいというメリットもあります。

参考資料;資生堂「医療領域研究:毛髪再生医療」
参考資料:資生堂、毛髪再生医療の本格研究に着手 カナダのバイオベンチャー企業〝レプリセル社〟と技術提携契約について基本合意

2 京セラ・理研:毛髪の源となる細胞(上皮幹細胞と毛乳頭細胞)を培養する

施術法は資生堂のやり方と、ほとんど大差ありません。違うのは使用する細胞です。
資生堂が毛球部毛根鞘細胞を使用し、京セラは上皮幹細胞と毛乳頭細胞(間葉幹細胞)を使用します。
上皮性幹細胞は毛乳頭細胞が存在する毛乳頭より上部、表皮(頭皮)に近いバルジ領域に存在します。
発毛は毛母細胞の激しい分裂(増殖)で繰り返されますが、その分裂にシグナルを出すのが毛乳頭細胞です。
先程のバルジ領域にある上皮幹細胞もまた、発毛に欠かすことができない細胞であり、上皮性幹細胞と毛乳頭細胞が相互に働くことで、発毛してから自然脱毛するまでのヘアサイクルを円滑にし、発毛を促し、早期の抜け毛を予防します。

参考資料:京セラニュースリリース「再生医療「毛包器官再生による脱毛症の治療」に関する共同研究の開始について」
参考資料:「理研多細胞システム形成研究センター 器官誘導研究チーム 仕事研究室」
毛髪再生医療の実現を目指してー実現を目指してー

3 慶応大学:ips細胞を使って発毛させる

ips細胞を使って発毛した男性
慶応大学医学部の大山学准教授(現・杏林大学医学部教授)による研究です。
まだまだ、研究段階ですが、重症な脱毛症⦅瘢痕性脱毛症など)にも有効と期待されています。
前述した「1」と「2」はハゲていても幹細胞のある毛包が存在していれば、活用できます。
しかし、重症な脱毛症の場合、幹細胞が壊滅していることがあり、前述の施術法でも発毛させることはできません。
大山氏は今、話題のips細胞を活用することで幹細胞の入った毛包を再生することに成功いたしました。その方法で、生えた毛髪は従来の1/20の太さだったといわれています。
この結果をどう考えるかですが、タネさえもないところから極細とはいえ、髪が生えてきたという事実は画期的なことであることは間違いありません。

参考資料:SKiP「iPS細胞から毛包再生、重い脱毛症の人の力に」

毛髪再生医療のメリットとデメリット

メリット

日本皮膚科学会作成によるAGAガイドライン(2017)によると、推奨度Aはフィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルとなっています。
近年の女性のAGAの深刻化もあって、ガイドラインには女性に対する推奨度の掲載がありますが、内服薬であるフィナステリド、デュタステリドの女性の使用についてはD判定で好ましくないという評価になっています。
また、ミノキシジルは外用剤としての使用ですが、男性は5%濃度の使用OKであるのに対して、女性はその1/5の1%濃度のみと限定されています。
毛髪再生医療ではこのような性差はなく、男女同等に可能です。
また、自家植毛術よりも侵襲性も低く、毛髪の増加を期待できます。

デメリット

2020年には実用化などと言われていますが、遅れるのではという声もチラホラ……。例え、順調に実用化されたとしても、望む者全てに行き渡るはずがなく、一般国民がこの特殊な先進医療に触れることができるのは、さらに後になることは間違いありません。

自分の頭から一部の頭皮を取り出した後、他で細胞培養が行なわれ、自分の頭に戻ってくるまでの長期間、ハゲや薄毛のままなのか、せめてAGAが進行しないために育毛剤、内服薬の併用は可能なのか、このようなフォローの記述はまだありません。
また、自家移植だから安全性が高い、副作用が少ないとはいっても、新施術だけに何が起きるかわからない怖さもあります。
しかし、このようなことを言っていては、科学や医学は進歩しないこともわかっています。
現在、行なわれているあらゆる分野の効果的な治療も当初は不安、未熟などから成長し確立されたのですから。
あと、費用どれだけ高くなるのだろうという心配もあります。

参考資料:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

まとめ

近年、医療機関だけでなく、資生堂、京セラ、理研といった企業も再生医療の研究開発に力を入れています。
それは、2014年に厚生労働省が「再生医療新法」を制定したことと関係があります。
この法律が制定されるまでは細胞の培養などは医療機関だけしか行うことができなかったのですが、制定以後、企業も実施が可能になりました。
互いの得意分野を持ちよっての共同開発は、さらなる進歩を遂げるはずです。
また、医療機関や企業のやる気を起こさせる国の政策もまた、科学や医学の進歩に必要不可欠で、私たちに希望ある未来を感じさせてくれます。


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