再生医療の豆知識

抗がん剤以外の身近な薬剤で薄毛 脱毛になることがあります

2019年02月25日

「抗がん剤で髪が抜ける」ということは、よく知られていますが、それ以外の薬剤、例えば、痛み止めとか胃薬といった身近な薬剤でも髪が抜けやすくなることがあります。
AGAが進行しないようにフィナステリドを飲んだり、ミノキシジル含有外用剤を塗っているのに一向に改善がみられない、むしろ抜け毛がひどくなっているという人で飲んでいる薬剤があれば、薬剤のせいかもしれません。

抗がん剤とそれ以外の薬剤における脱毛の違い

抗がん剤とそれ以外の薬剤における脱毛の違い
抗がん剤ではカツラを使いたくなるほど激しく抜けますが、それ以外の薬剤は全体的に髪の量が減少したと感じる程度がほとんどです。
どこが違うのか、解説します。

ヘアサイクル(毛周期)という髪の一生がある

私たちは生まれてから幼児期、小児期、成年期、老年期、やがて死を迎え、一生を閉じるように髪(毛)も抜けるまでに下記のような経過(ヘアサイクル)を辿ります。

・成長期:毛母細胞の分裂(増殖)が盛んでグングンの伸び、太くしっかりとした髪になる時期
・退行期:髪の成長が止まる時期
・休止期:下から新しい髪が押し出してきて自然に抜けるのを待っている時期

1人の頭に上記の時期の髪が混在しているわけですが、一番多いのが、成長期の髪で9割近く占めています。

抗がん剤で成長期の髪が抜け、その他の薬剤で休止期の髪が抜ける

9割近くある成長期の太くてしっかりとした髪が抗がん剤によって抜ける(成長期脱毛症)わけですから、ハゲになるのは当たり前ですよね。

なぜ、そうなるのか……抗がん剤の作用機序に原因があります。
がん細胞は増殖の速い細胞。従って抗がん剤もそのスピードに合わせて細胞を殺していく薬剤が望ましいです。
ただ、現在使用されているほとんどのがん剤はがん細胞、正常細胞の見分けがつかず、増殖の速い細胞ならどんな細胞でも攻撃してしまうデメリットがあります。
生体には増殖の速い細胞が色々ありますが、髪となる毛母細胞も増殖が速く、成長期の元気な髪は抗がん剤の攻撃を受けてしまうのです。

それ以外の薬剤の大部分は、抜けるのを待つばかりの休止期の髪が自然脱毛していくのを待たずに脱毛を促してしまいます(休止期脱毛症)。
休止期の髪は、成長期の髪と違って全体量も少ないため、ハゲまでには進行しません。しかし、休止期の髪でも早めに抜ければ、薄毛、あるいは頭皮が透けてみえる状態になり、「これ以上、髪が少なくなったらどうしよう、何れはハゲるかも」という不安に陥ってしまいます。

因みにAGA、出産後、鉄欠乏性貧血、ストレスなどが原因の脱毛症は休止期脱毛症に分類されます。

休止期脱毛症をおこしやすい薬剤

休止期脱毛症をおこす薬剤は驚くほど多く存在しています。
・(スタチン系)高脂血症治療薬
・甲状腺機能亢進症治療薬
・抗てんかん薬
・抗うつ薬
・高尿酸血症(痛風)治療薬
・ビタミンA製剤
・抗血栓薬
・β-ブロッカー
・消化性潰瘍治療薬
・パーキンソン病治療薬
・抗炎症(非ステロイド)
・経口避妊薬
などがあり、インターフェロンα、γも脱毛症をおこしやすいことでよく知られています。

次は上記の薬剤がどのような作用機序で休止期脱毛症をおこすのか、代表的な薬剤で解説致します。

抗うつ薬、抗てんかん薬、経口避妊薬など

このような薬剤を飲むと、成長期に入った髪が十分に伸びなくなり、太くならないうちに退行期に移行、そのまま休止期に突入して抜けてしまいます。

スタチン系高脂血症治療薬

この薬剤を飲んでいる人は非常に多いので特に詳しく解説しましょう

男性や若い人にもみられますが、主に閉経後の女性が飲むと、休止期脱毛症をおこしやすくなります。
スタチン系高脂血症治療薬はHMG-CoA還元酵素を阻害してコレステロールを低下させる薬で、細胞膜の構成成分の原料となるメバロン酸の合成も阻害します。

細胞膜の主成分はリン脂質。要するに高脂血症治療薬を飲むと、脂質の合成が阻害されることになるため、細胞膜が十分に作られず、角化障害がおきます。
髪の毛は角化した細胞の集合体ですから、この薬剤を飲むことで抜けやすくなります。
また、増毛効果がある女性ホルモンはコレステロールが原料です。高脂血症治療薬でコレステロールを減少させると、女性ホルモンも減ってしまうことになり、薄毛、抜け毛になることがあります。

ビタミンA製剤

ビタミンAの過剰摂取は髪の主成分であるケラチンの合成を阻害します。よって脱毛症になりやすいのです。

その他に女性ホルモン製剤である経口避妊薬を飲むと、急激なホルモン環境の変化が生じて薄毛、脱毛がおきやすくなると考えられています。

話がややこしくなりますが、先程から抗がん剤は成長期の髪が抜ける(成長期脱毛症)と述べています。
これも休止期脱毛症と考えることもできるという説があります。

抗がん剤はがん細胞だけでなく,同じように増殖の速い毛母細胞のDNAも破壊しようとします。
そのとき、成長期で破壊される髪もあれば、抗がん剤によって損傷を受けた髪は早々と休止期に向かい、そこで抜けるという休止期脱毛症と同じ状況になることもあるようで、委縮性休止期脱毛症と呼ぶのがふさわしいとする意見もあります。

まとめ

まとめ
いかがでしたか?
いつまでたっても改善しない薄毛や脱毛の場合、自分が飲んでいる薬剤を調べてみるといいですね。身近にある薬剤も薄毛、脱毛を起こすことがあることを常に頭に入れておきましょう。
ただ、脱毛の有無に関わらず、飲まなくてはいけない薬剤があります。自己判断で飲むのをやめるのではなく、必ず、主治医に相談する必要があります。
薬剤による脱毛は基本的には飲むのを止めた後、しばらくすれば再び髪は生えてきます。
しかし、非常に個人差があり、飲む前のように元に戻らないこともまれにあります。
そのような場合も当クリニックに相談、受診していただければ、再生医療という違う角度からの改善が期待できます。


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