再生医療の豆知識

再生治療を用いた心臓病の治療と研究内容

2019年02月01日

年々、日本の人口は少なくなっているなかで、増加の一途をたどっているのが心臓病です。生物の生命維持に欠かせない器官である心臓は、病気により機能が失われることで、患者さんの生活に大きな影響を与えるものです。近年、心臓病の新しい治療法として、再生医療を用いた治療法が期待されています。この記事では、心臓病における再生医療のポイントや研究についてご紹介いたします。

日本における心臓病の現況

日本における心臓病の現況
心臓は全身に血液を送り出す役割のある器官です。近年の高齢化や食生活の欧米化にともなって、心臓病を抱える患者さんの数は増え続けています。心臓病になると、心臓の機能が失われるため、薬やペースメーカ―の埋め込みなどによる治療が必要となります。また、症状が重い場合では、人工心臓や他人の心臓を移植する移植治療も必要となるでしょう。

心臓は細胞の修復が難しい

転んでひざを擦りむいても、しばらくすると元通りになることは誰もが経験したことがあるのではないでしょう。細胞は古い細胞が新しい細胞に置き換わることで、自己修復させる機能があります。
一方で、いくつかの体の器官の中には、病気やケガなどで損傷しても、自己修復が難しいものがあります。なかでも、心臓はいったんダメージをうけると、自己修復ができず、機能が失われてしまうことで知られています。特に、心臓は生命維持に欠かせない器官であるため、機能不全に陥ることで、患者さんの生活にも大きな影響を与えるものです。再生医療を用いた心臓病の治療では、病気などにより失われた心臓の機能を取り戻すことが目的されています。

心臓の病気における再生医療のポイント

再生医療では、あらゆる細胞に分化する幹細胞を用いて、組織や器官を再生して移植したりする治療法です。よく似ている治療法に移植治療があります。こちらは、ドナーである他人の臓器を患者さんに移植するものです。
日本では、臓器移植法が制定されてから20年以上経ちました。しかし、日本における心臓の移植治療は年間数十件程度であり、深刻なドナー不足の状態です。また、仮に心臓の移植治療が受けられたとしても、自分以外の人の臓器を移植することによる、拒絶反応のリスクもゼロでありません。
このような状況のなか、新たに注目されているのが再生治療を用いた心臓病の治療です。
一方で、実際に再生医療を用いた治療法は、まだまだ研究段階のものが多いのが現状です。特に、心臓など生命維持に不可欠な臓器の再生は、再生医療の技術のなかでも難しいとされています。心臓病では、心臓の血管が詰まったり、心臓の筋肉である「心筋」の働きが低下したりすることで起こるものです。そのため、心臓病治療に向けた再生医療では、心臓の血管や心筋の再生に重点を置いた研究が進められています。再生医療を用いた心臓病の治療が確立されれば、これまで治療が困難だった患者さんに、希望を与えるといえるでしょう。

再生医療を用いた心臓の治療

再生医療を用いた心臓の治療
現在、再生医療の研究では、心臓病の治療への貢献を期待して、さまざまな再生医療の研究が行われています。ここでは、日本で行われている再生医療を用いた心臓病治療の研究内容について、いくつかご紹介します。

iPS細胞を用いた心臓病の治療法

再生治療のニュースでもよく耳にするiPS細胞は心臓病の治療にも用いられることが期待されています。iPS細胞について簡単に説明すると、皮膚細胞などを採取して、特定の条件化で細胞の再プログラミングをして作製します。iPS細胞はさまざまな細胞に分化でき、なおかつ無限に増殖できるという特徴を持つ細胞です。
とはいえ、心臓の筋肉である心筋を再生するにも、1億もの細胞を必要するため、決して容易なことではありません。国内の大学では、iPS細胞から心筋を再生するための方法を開発しており、今後の心臓病の治療に大きな変化をもたらすことが期待されています。また、iPS細胞を用いて心筋が再生できれば、そのまま移植するだけでなく、患者さんに適した薬を見つけるのにも役立つと考えられています。

心臓の血管の再生を促す治療法

再生医療を用いた治療には、すでに医療現場で実際に使用されているものもあります。なかでも、心臓病の治療に用いられているのが、「細胞シート」といわれるものです。細胞シートとは、患者さんの足などの筋組織を採取して、シート状にしたものを、手術で心臓に張り付けます。筋肉や細胞は「サイトカイン」と呼ばれる、組織の修復を促すたんぱく質が分泌します。細胞シートから分泌されるサイトカインによって、心臓の血管の再生が促される仕組みです。

まとめ

これまで、重症になると治療が困難とされていた心臓病。しかし近年、再生治療を用いることで、心臓病の治療に新たな可能性が生まれています。現在、心臓病に打ち勝つための、再生医療の技術の進歩を期待したいですね。


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