再生医療の豆知識

ダメージを受けた脳細胞が再生する?再生医療を使った脳梗塞の治療

2018年12月10日

脳梗塞は日本人の死因の3位にあたる脳血管による病気です。脳梗塞は命にかかわる病気であるだけでなく、一命を取りとめても、身体の麻痺や失語症などの障害が残ることがあります。脳梗塞は発見が遅れると、根本的な治療が難しいとして知られていますが、近年再生医療を用いた治療法が注目を集めています。この記事では、再生医療を用いた脳梗塞の治療について紹介します。

脳梗塞とはどんな病気?

脳梗塞とはどんな病気?
脳梗塞は脳卒中の大部分を占める病気で、脳の血管が詰まることで、脳に十分な酸素が行きわたらなくなり、脳細胞を死んでしまいます。脳は言葉や運動、感覚など身体の器官の司令部の役割のある器官です。そのため、脳梗塞により脳に損傷を受けることで、次のような障害が残ることがあります。
・身体の一部に麻痺が残る
・言葉がスムーズに出なくなる
・意識がはっきりしない

再生医療を用いた脳梗塞の治療

脳は一度ダメージを受けると再生が難しいため、これまでの治療は脳梗塞の再発を予防したり、麻痺に対するリハビリなどの治療が主でした。しかし近年になって、再生医療を用いた脳梗塞の治療が注目されています。

再生医療とは、細胞の元となる「幹細胞」を培養したものや、細胞の再生や修復を促す細胞を移植する治療をいいます。よく似ている治療法に移植治療があります。移植治療では他人の臓器を自分の体に移すのに対して、再生医療では、細胞を培養したものを移植したり、治療で自分の細胞の再生を促したりします。

ここでは、実際に行われている脳梗塞の再生医療が、幹細胞を用いた治療法です。幹細胞とは、特定の細胞に分化する細胞のことで、いわば細胞の元なるものです。脳梗塞の再生医療で使われる幹細胞は、自分の体の皮下脂肪から採取するので、患者さんの負担はそれほど大きくありません。採取された幹細胞は、点滴によって投与され、脳細胞の再生を期待します。

幹細胞の投与で脳細胞は再生するのか?

実際に、幹細胞を投与して、脳の神経細胞が増えるかは疑問がある人もいるでしょう。ひと昔前までは、神経細胞の再生の可能性はないとされていましたが、多くの研究のなかで、幹細胞の投与により、脳の神経細胞の再生が促せることが分かっています。

脳に幹細胞を投与してしばらくすると、血管や神経の再生が起こったり、脳の神経を活発化させる効果があります。、幹細胞を用いた脳梗塞の再生医療は、脳の失われた機能を完全に修復するものではありません。しかしながら、脳の神経細胞にプラスのアクションをすることで、患者さんの症状が少しでも改善することが期待できるといえます。

そのほかの再生医療を用いた脳梗塞の治療

そのほかの再生医療を用いた脳梗塞の治療
再生医療を用いた脳梗塞の治療は、研究段階になりますが、そのほかの治療法も検討されています。ここでは、現在研究されている再生医療を用いた脳梗塞の治療法について説明します。

iPS細胞を用いた脳梗塞の再生治療

再生医療に詳しくない方でも、「iPS細胞」という言葉を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。iPS細胞は幹細胞のひとつであり、あらゆる細胞に分化できる細胞のことをいいます。iPS細胞そのものは、皮膚細胞に特定の遺伝子を入れて作られますが、このときに遺伝子を傷つけてしまうことがあります。そのため、iPS細胞そのものがきちんと分化しないまま増殖するなどがん化する可能性も持ち合わせています。脳梗塞の再生医療でiPS細胞を用いる場合は、iPS細胞ががん化しないように安全性を確立する必要があるといえるでしょう。

骨髄細胞を用いた脳梗塞の再生治療

脳梗塞の再生治療で幹細胞を使う場合、皮下脂肪から採取されることがほとんどでした。近年、骨髄細胞のなかには、脳の神経細胞に分化できる幹細胞が含まれていることが分かりました。骨髄細胞を使った脳梗塞の再生医療は、点滴だけでなく、直接に脳に移植する形も考えられています。骨髄細胞による脳梗塞の治療は、医療現場での応用化のための研究が進められており、今後治療の選択肢のひとつとなるかもしれません。

脳梗塞の治療で再生医療を用いる利点

これまで脳梗塞の治療というと、脳梗塞が起きてからいかに早く治療を開始できるかが重要でした。脳梗塞の症状には軽いものから重いものまであります。たとえば、脳梗塞が発生してから数時間以内に、脳の血管を詰まらせた血栓を溶かすための治療を開始すれば、患者さんの予後もよくなります。一方で、脳梗塞をみつけるのが遅れて、治療の開始が遅くなれば、脳のダメージが大きくなります。そのため、患者さんが一命を取りとめても、身体の麻痺など重い障害が残る可能性が高くなるでしょう。このように今までは、治療の開始が遅れた脳梗塞の患者さんに対しては、根本的な治療をすることができませんでした。

しかし近年、再生医療を用いた脳梗塞の治療が始まったことで、重度の脳梗塞の患者さんに対しても、治療の見込みを期待できるようになっています。再生医療は今後の脳梗塞の治療を明るくすることでしょう。


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