過敏性腸症候群(過敏性大腸炎 略称; IBS)の症状改善におすすめの運動療法とは?

2019年11月30日

監修:長岡 美妃先生

現代医療に携わりながら病の根本原因、医療本来の在り方、さらに真の社会の在り方、女性の生き方を追求している医師。 東京女子医大消化器外科センターにて癌の外科治療に従事。
その後、福岡の秋本病院にて緩和ケアセンター長として多数の方の精神的苦痛を和らげてきた経験をもつ。 内視鏡の技術にも定評がある上、コミュニケーション能力が非常に高く、患者様からの信頼がとても厚い。 著書:『「真の」医療者をめざして』 他

2ヶ月以上、下痢もしくは便秘が続いている」「下痢と便秘を交互に繰り返す」「不安や緊張といったストレスによって急に激しい腹痛に襲われる」「ガス漏れが続く」「人が背後にいるとガスが止まらなくなる」「急にトイレに行きたくなるので外出が不安」「ストレスを感じやすい」「頭痛が続く」「慢性的に吐き気がある」「うつっぽい」

これらの症状が2ヶ月以上続きながらも、器質的異常が認められない場合は過敏性腸症候群(IBS)に罹患している可能性があります。過敏性腸症候群の症状の改善には適度な運動が有効で、運動療法として推奨されます。

この記事では、過敏性腸症候群の症状の改善効果が見込める運動療法を紹介いたします。

過敏性腸症候群(IBS)の症状4タイプ

過敏性腸症候群(IBS)の症状は便の形状によって便秘型、下痢型、混合型(便秘と下痢を交互に繰り返す)、分類不能型の4タイプに大別されます。

①下痢型

男性に多く、少しでもストレスを感じると下痢を引き起こします。腹痛を伴うことが多く、便に粘液が混ざることもあります。

②便秘型

女性に多く、ストレスにより便秘が続きます。硬い便やコロコロ便が多いです。

③混合型

腹痛及び腹部の違和感、下痢と便秘が複数日間隔で交互に現れます(交代性便通異常)。

④分類不能型

上記いずれにも当てはまりませんが、便の形などで判断します。

また、ガスがずっと漏れ続ける症状も見られ、背後に人が立つとかならずガスが漏れてしまうという症状もまれに見られます。

過敏性腸症候群(IBS)の原因とは

過敏性腸症候群(IBS)は大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称です。病院で血液検査や内視鏡検査をしても、腸管には腫瘍や潰瘍といった異常がみつからないため、診断が難しい病気です。

過敏性腸症候群を引き起こす原因もいまだ明確ではありませんが、大きく分けて2つ考えられます。一つは、自律神経のバランスが乱れた結果、不安や緊張といったストレスが自律神経を介して腸の異常な運動を引き起こしているというもの。

もう一つは神経伝達物質「セロトニン」の影響です。精神の安定に関わるセロトニンは約90%が腸内で作られますが、腸内フローラのバランス崩壊により産生不足、あるいは産生過多が起こると自律神経に影響を与えます。ストレスによって腸のセロトニンが分泌されると腸内のセロトニン受容体と結合し蠕動運動に異常が発生。それにより腸の不快感、腹痛、下痢などを引き起こすとされています。

腸と脳は「腸脳相関」と言われるほど密接な関わりがあり、そのシグナルが自律神経の乱れによりうまく伝達できないと腸と意識に乖離が生じてしまいます。

10代〜30代の若い世代が罹患しやすいため学生や社会人としての活動が阻まれることで、引きこもりがちになるなどQOL(生活の質)の低下も問題です。症状が長期化するほどメンタル面でもさらなるストレスを生む悪循環を引き起こしてしまいがちです。自律神経にも精神面にも良い影響を与える運動療法を積極的に取り入れて、心身のリセットをはかりましょう。

過敏性腸症候群(IBS)の運動療法

適度な運動は自律神経のバランスを整える効果に加え、ストレスケアにも有効です。交感神経と副交感神経という二つの自律神経の交互スイッチのバランスがよくなり、心身に良い影響を与えます。ウォーキングやストレッチなど無理なくできる運動を日々の中に取り入れましょう。

  • ウォーキング…歩く量を増やしたり、歩幅を広げて早歩きするだけでも運動量はアップします。颯爽と歩くことは足腰を使うため、胃腸にも良いでしょう。かかとから着地するようにしましょう。
  • ストレッチ…体を伸ばすと体の柔軟性が高まり、気分もリセットできます。座ったままでも手を組んで上に伸ばしたり、足を前方に伸ばすだけでも簡単にストレッチできます。ストレッチの際には息を止めないことがポイント。
  • その場足踏み…太ももを直角より上くらいまで上げてその場で足踏みしましょう。回数は1030回くらいを目処にやりすぎず、終わった後に心地よさが残る程度を1日数回行うと良いでしょう。
  • ラジオ体操…ラジオ体操は無理なく運動できて、ストレッチ効果も高いので、時間をみつけて習慣にすると良いでしょう。
  • 腹筋…お腹の筋肉を鍛えることは、お腹の力不足による便秘にも効果的です。お腹へのいい刺激となるため排便のリズムにもプラスです。

過敏性腸症候群(IBS)のその他の治療方法

過敏性腸症候群(IBS)の一般的な治療については食事療法、薬物療法、心理療法、そして運動療法が挙げられます。

過敏性腸症候群IBS)の食事療法

過敏性腸症候群(IBS)を改善するためにまず行いたいのは、生活習慣の見直しです。食事においては食べ過ぎや脂質過多、刺激の強い食生活、飲酒や喫煙を見直し、食事の時間をなるべく規則正しくするよう心がけてください。特にガス型の人は腸に空気を送り込んでしまいやすい早食いや、すすりながら飲む熱い飲料、炭酸飲料はなるべく避けることも改善に繋がります。便秘型の方は、便意のタイミングを逸しないよう生活リズムを工夫してみましょう。

過敏性腸症候群(IBS)の心理療法

そして過敏性腸症候群(IBS)はストレスなど心因により症状があらわれる病気のため、精神面でのケアは大変重要です。不安やストレスの原因となっているものを突き止め、解消していくことは治療のために欠かせませんし、医師との相談の上必要に応じてカウンセリングやメンタルクリニック、心療内科、あるいは精神科での受診も有効と言えます。不安解消の薬物療法として抗うつ剤や抗不安剤などが処方されることもあります。

過敏性腸症候群(IBS)の薬物療法

薬物療法では整腸剤や高分子重合体、抗コリン剤、止瀉薬、漢方などが症状に応じて処方されます。

過敏性腸症候群(IBS)の最新治療法

過敏性腸症候群(IBS)の最新の治療方法として今最も注目を集めているのが、腸内フローラマッチングによる腸内環境の抜本的改善です。患者さんがどのような腸内細菌叢(腸内フローラ)であるかを腸内フローラ検査で確認し、検査結果から適切な乳酸菌をマッチングさせることで腸内フローラのバランスを整えます。

腸内環境が整えば自律神経の乱れも改善へと向かいますし、過敏性腸症候群の原因の一つと考えられるセロトニンの過剰もしくは過小産生も、バランスが向上します。そのため長年悩んでいた過敏性腸症候群の症状からもたくさんの方が回復されています。

また、口腔内の金属が原因のアレルギーや金属の接触で発生するガルバニー電流なども自律神経に悪影響を与えるため、それらを取り除いていくことも大変に効果的であることがわかってきています。

一般の病院における血液検査や内視鏡検査が中心の診療では一人の体に1200 100兆個存在すると言われる腸内フローラを検査することはできません。当クリニックでは腸内フローラ検査及び腸内フローラマッチングと口腔内金属アレルギー検査をいち早く取り入れ、数多くの治療実績を上げております。ぜひ一度当クリニックにご相談ください。