過敏性腸症候群(過敏性大腸炎) 慢性的なつらい下痢はなぜ起こるの?

2019年12月2日

監修:長岡 美妃先生

現代医療に携わりながら病の根本原因、医療本来の在り方、さらに真の社会の在り方、女性の生き方を追求している医師。 東京女子医大消化器外科センターにて癌の外科治療に従事。
その後、福岡の秋本病院にて緩和ケアセンター長として多数の方の精神的苦痛を和らげてきた経験をもつ。 内視鏡の技術にも定評がある上、コミュニケーション能力が非常に高く、患者様からの信頼がとても厚い。 著書:『「真の」医療者をめざして』 他

下痢といってもその原因や症状は様々です。腹痛を伴う急な慢性的な下痢や、慢性的な下痢、あるいは食中毒、旅先などでの思いがけない下痢もあります。今回は中でも過敏性腸症候群(IBS)の可能性を秘めた、慢性化した腹痛を伴う下痢、そして便秘と下痢を繰り返す症状についてご説明しましょう。

急な腹痛を伴う下痢

トイレ駆け込み男子が多いワケとは?

急にお腹が痛くなって冷や汗を浮かべながらトイレに駆け込む。こんな下痢の症状は男性により多く見られます。電車の中や外で人を待っているとき、仕事で緊張したときなど、なぜか急に辛い腹痛に襲われ困った経験を持つ方は少なくないでしょう。

そもそも男性は女性と比べてとんかつや焼き肉など脂っこい料理やビール、炭酸飲料といった冷たいのみものを好む傾向にあります。それが刺激となって胃腸が消化不良を起こし、下痢になるというケースはよく見られます。

その場合は食事の偏りを正し、食物繊維を適切に摂りながら飲み物も常温や温かいものを選ぶなど食生活の改善を心がけることが大切です。

しかしながら単発の下痢ではなく急な腹痛を伴う下痢が慢性的な症状になっているのなら、それはストレスが原因の過敏性腸症候群(IBS)「下痢型」かもしれません。

最大の原因はストレス

慢性的な下痢、急に下痢に見舞われるのはもちろん男性に限ったことではありませんが、男性に多い理由としてストレスにさらされる機会が多いことが考えられます。腸と脳は「腸脳相関」と言われるほど密接な関わりがあり、自律神経によって繋がっています。

緊張や不安といったストレスを感じると自律神経が乱れ、脳が腸に異常なシグナルを伝達。それにより腸の運動がおかしくなってしまうのです。会社や家庭でのストレスやプレッシャーが、いつしか下痢を引き起こす原因となっていたかもしれません。

何らかのストレスを受けるとお腹が痛くなってトイレに駆け込む。近くにトイレがあって入れる場合はいいけれど、トイレに駆け込めないシチュエーションで漏らしてしまうというケースもあります。そうなると外出が怖くなって、引きこもりがちになることも。

病院へ行っても明確な病名を診断してもらえず、処方された薬もそれほど効果がないと、精神的にも追い込まれてうつ症状を招く原因にもなってしまいます。 

自分ではあまり意識していなくても、いつの間にかストレスは蓄積してしまうもの。精神的な不安などストレスと関係した急な腹痛を伴う慢性的な下痢、あるいは粘液が混ざった状態の排便が2ヶ月以上続いている場合は、過敏性腸症候群(IBS)を疑ってみる必要があります。

便秘と下痢を慢性的に繰り返してしまう場合

便秘と下痢を繰り返す原因とは?

慢性的に便秘と下痢を繰り返してしまう便通の悩み。だんだんと慣れてくると諦めてしまう人も多いようです。しかしこの症状、我慢できるからと放置していいものではありません。腸の病気のサインでもあるからです。

便秘と下痢を繰り返す症状にも様々な原因が考えられます。大きく分けると2つに分類されるのですが、一つは大腸がんやクローン病、潰瘍性大腸炎など炎症や潰瘍を伴う器質性の疾患。そしてもう一つはライフスタイルやホルモンバランスの乱れに伴うもの、ストレスなど精神的な影響が大きい過敏性腸症候群(IBS)などの機能性が原因となっているものです。

器質性の原因による病気

大腸がんやクローン病、潰瘍性大腸炎など炎症性の疾患はまず医師による治療を受けるべき病気です。これらは炎症を伴う潰瘍や原因となる細菌の感染などによる疾患であり適切な治療が望まれます。

大腸がんは便通異常が一つのサインであり自覚症状のため、異常を感じたら大腸カメラ(下部内視鏡)などで詳しい検査を受けましょう。

クローン病や潰瘍性大腸炎は難病指定の疾患で、早期発見が重要。内視鏡検査や血液検査などを受け、一日も早く適切な治療を開始してください。

機能性の原因による病気

食生活の乱れや、ライフスタイルの変化、あるいはホルモンバランスが崩れることによる原因は、まずは規則正しい生活を心がけることや食事を見直すことが大切です。しかしながらそれでも改善せず、病院でもなかなか病名も定まらず薬を飲んでも改善が見られない場合は、過敏性腸症候群(IBS)を疑うべきでしょう。

過敏性腸症候群(IBS)である場合、便秘と下痢を繰り返す「混合型」に分類され、腹痛及び腹部の違和感、便秘と下痢が複数日交互にあらわれます。「腸脳相関」との関わりが深く、ストレスを感じることにより自律神経が乱れ、脳から腸に異常な司令を伝達してしまうことで腸の運動バランスが崩れてしまうのです。

過敏性腸症候群(IBS)の治療方法

過敏性腸症候群(IBS)は炎症や腫瘍といった器質的疾患が認められないため、病名がはっきりしづらい病気です。先進国の10代〜30代と若い世代に多く見られ、繊細で神経質なタイプがかかりやすい傾向にあります。

ストレス等の起因による自律神経の乱れが主とした原因と考えられていますが、最近の研究で、神経伝達物質の「セロトニン」の影響が原因と考えられるケースも見られるようになりました。

セロトニンは精神の安定に関わるホルモンで約90%が腸内で産生されますが、過敏性腸症候群はこの腸内フローラの乱れによりセロトニンの産生不足あるいは産生過多によって腸の蠕動運動に異変が生じている可能性があります。それが腸の不快感や腹痛、下痢あるいはガスが漏れ続けるなどガスのコントロールが厳しい状態に繋がっているケースも実際に多いのです。

過敏性腸症候群(IBS)の治療方法としては食事療法、運動療法、薬物療法、心理療法が一般的です。食事や運動などライフスタイルを整えることは当然ながら大切なことです。

さらに根本原因であるストレスの理由を見極め、心理療法などを取り入れながら改善していくことも重要なプロセスです。しかしながら、これまでの一般的な治療方法ではいずれも過敏性腸症候群の症状の長期的な改善には繋がっていないのも現実でした。

そこで、近年治癒率の高さや安全性から注目を集めているのが、腸内フローラを検査し、腸内フローラマッチングを行う治療法。さらに、ガルバニック電流など口腔内での金属アレルギー反応が自律神経の乱れに繋がっているという研究から、口腔内金属アレルギー検査でその影響について検査し解消していくというアプローチです。

しかしながら現在はまだ腸内フローラマッチングと口腔内金属アレルギー改善をふまえた治療ができる病院が少なく、過敏性腸症候群の根本的な治癒率は残念ながら決して高い状況ではありません。そのような中、当クリニックは、遺伝子検査と腸内フローラ研究の第一人者である陰山医師がいち早くこれらの治療方法を取り入れ、非常に高い治癒率を実現しております。

自律神経との密接な関わりのある物質の大半が作られる腸内を整え、自律神経の乱れを起こす口腔内金属アレルギーを改善。過敏性腸症候群でお悩みの方は、ぜひ一度当クリニックにご相談ください。