その下痢や腹痛、仮病じゃないかも!子供の過敏性腸症候群(過敏性大腸炎 略称; IBS)に関して

2019年12月8日

監修:長岡 美妃先生

現代医療に携わりながら病の根本原因、医療本来の在り方、さらに真の社会の在り方、女性の生き方を追求している医師。 東京女子医大消化器外科センターにて癌の外科治療に従事。
その後、福岡の秋本病院にて緩和ケアセンター長として多数の方の精神的苦痛を和らげてきた経験をもつ。 内視鏡の技術にも定評がある上、コミュニケーション能力が非常に高く、患者様からの信頼がとても厚い。 著書:『「真の」医療者をめざして』 他

近年、小学生や中学生の子供の過敏性腸症候群(IBS)が増えています。問題は、下痢や腹痛、便秘といった症状はあるのに検査をしても炎症や腫瘍といった異変がないため、周りの大人が仮病を疑ってしまうこと。

だからこそ、親や周りの大人が子供の過敏性腸症候群についてしっかりと理解を深めることが大切です。

過敏性腸症候群(IBS)とは

10代〜30代と若年層を中心に増加している過敏性腸症候群(IBS)はストレスと深い関係があるため、特に先進国での罹患率が高い病気です。

自律神経の乱れにより症状があらわれますが、腸管には腫瘍や潰瘍といった器質的な異常が認められないため、診断が難しい病気の一つと言えます。神経質で几帳面、感受性の強いまじめなタイプがかかりやすく、自律神経失調症の傾向にある人は特に注意が必要です。

子供がかかるきっかけとしては、習い事や塾、受験や学校での人間関係などのストレスにさらされることなどが挙げられます。

例えば試験で緊張したことが原因で、急激な腹痛と下痢に見舞われ、その後も試験の度に同じ症状があらわれるようになることもあります。

それを精神的な弱さと責めてしまうとますます悪化して長期的な症状となりがちですし、周りの過剰な心配はかえってストレスとなり不安感を与えてしまいます。お子さんが症状を重く受け止めないような言葉掛けや対応を心がけたいものです。

症状は便の形状によって便秘型、下痢型、混合型(便秘と下痢を交互に繰り返す)、分類不能型の4タイプに大別されます。

①下痢型

男性に多く、少しでもストレスを感じると下痢を引き起こします。腹痛を伴うことが多く、便に粘液が混ざることもあります。

②便秘型

女性に多く、ストレスにより便秘が続きます。硬い便やコロコロ便が多いです。

③混合型

腹痛及び腹部の違和感、下痢と便秘が複数日間隔で交互に現れます(交代性便通異常)

④分類不能型

上記いずれにも当てはまりませんが、便の形などで判断します。

また、ガスがずっと漏れ続ける症状も見られ、背後に人が立つとかならずガスが漏れてしまうというガス型の人もまれに見られます。

お子さんが下痢または便秘、もしくは便秘と下痢が数日おきに交替で起こる症状や自分でコントロールできないガス(おなら)漏れの症状が2ヶ月以上、週に一度以上の割合で続いた場合、過敏性腸症候群の可能性を考えてみるべきでしょう。

過敏性腸症候群(IBS)の原因とは

過敏性腸症候群の症状の原因は、大きく分けて2つと考えられています。一つは、自律神経のバランスが乱れた結果、不安や緊張といったストレスが自律神経や液性因子(ホルモン、サイトカインなど)を介して腸の異常な蠕動運動を引き起こしているもの。

もう一つは神経伝達物質「セロトニン」の影響です。精神の安定に関わるため幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンは約90%が腸内で作られますが、腸内フローラのバランス崩壊により産生過多が起こると自律神経に影響を与えます。

ストレスによって腸のセロトニンが過剰に分泌されると腸内のセロトニン受容体と結合し蠕動運動に異常が発生。それにより腸の不快感、腹痛、下痢などを引き起こされると考えられています。

腸と脳は「腸脳相関」と言われるほど密接な関わりがあり、自律神経やホルモン、サイトカインを介し伝達しあっているため、過度の緊張やプレッシャーやストレスが引き金となり、症状が引き起こされます。

この自律神経が実は腸内フローラ(腸内細菌叢)と深い関係にあることが近年の研究でわかってきました。大人もお子さんも、安定した自律神経のバランスを維持できるか否かは、腸内フローラ次第とも言えるのです。

腸内フローラ(腸内細菌叢)とは

私たちの腸管内には約1200種、約100兆個という多種多様な菌が生息しています。重さでいうと個人差はありますが、大人で1kg2kgほどにもなります。

腸内フローラ(腸内細菌叢)については日々新たな発見があるほど次々と新事実が解明されていますが、腸内フローラの研究が進むにつれことでこれまで根本からの治療が難しかった病気への活路が見えてきました。

これまでの腸内フローラは、健康に良い影響を与える「善玉菌」、悪い影響を与える「悪玉菌」、その両方の働きをする「日和見菌」の3種があり、善玉菌は多いほどよく悪玉菌は少ないに越したことがないというのが常識でした。

しかし最新の研究で、善玉菌も悪玉菌もその働きは絶対的なものではないということがわかってきたのです。つまり、それぞれの菌がその人にとってどんな働きをするかによって、その菌の善し悪しの判断が必要というわけです。

太ったり痩せたりということも腸内フローラの影響が大きいことがわかっています。どんなに食事制限をしても運動をしてもなかなか痩せない人は、太る腸内細菌に侵されている可能性が高いのです。

さらに驚くべきことに、人の性格も腸内フローラが影響しているようなのです。腸内フローラはドーパミンやセロトニンなど脳内伝達物質の合成に関わっているため、腸内フローラのバランスを整えることにより、うつ病をはじめとするさまざまな精神疾患の改善が期待できます。

特に、過敏性腸症候群(IBS)との関わりも深い精神安定に欠かせないセロトニンはおよそ90%が腸(腸内細菌叢)で産生されることがわかっており、腸からの治療法である腸内フローラマッチングに注目が集まっています。

腸内フローラ(腸内細菌叢)を改善するメリット

腸内フローラからの治療については最後の章で詳しくお話ししますが、その前に、腸内フローラを改善することでお子さんにこれだけのメリットが生まれる可能性があります。

  • 学習能力、記憶力の向上
  • 運動能力の向上
  • メンタルが整う
  • 自閉症や発達障害を予防する
  • 体重を管理できる
  • アレルギーが改善できる

腸は「第二の脳」と呼ばれ、独自の神経ネットワークを構築し脳と密接に関わりあっています。腸内フローラのバランスは一歳半までにその基礎が固まると言われており、特に産道を通るとき、産後に初乳を飲んだか、また出産時に取り上げた医療関係者の菌や生まれた時の病院などの空気中、及び壁の常在菌などが大きく関わっています。

近年、潔癖なほど清潔感を求め、除菌などで菌から遠ざかる生活が正しいようなイメージを持つ親御さんも多いのですが、腸内フローラは多様性に富んだバランスのいい状態が理想です。

菌数が少ないとストレスに弱いとか、積極性に欠け、人との交流が不得手になってしまうケースが多くみられます。悪い影響をもたらす細菌が多いほど不潔なのは論外ですが、ある程度の菌への寛容さが強いお子さんを育てるのも事実です。

腸内フローラマッチングによる過敏性腸症候群(IBS) 

過敏性腸症候群の最新の治療方法として今最も注目を集めているのが、腸内フローラ治療による腸内環境の抜本的改善です。お子さんがどのような腸内細菌叢(腸内フローラ)であるかを腸内フローラ検査で確認し、検査結果から適切な乳酸菌をマッチングさせることで腸内フローラのバランスを整えます。

腸内環境が整えば自律神経の乱れも改善しますし、過敏性腸症候群の原因の一つと考えられるセロトニンの過剰もしくは過小産生も、バランスが向上します。そのため腸内フローラマッチングにより、長年悩まされていた過敏性腸症候群の症状からもたくさんの方が回復されています。

また、口腔内の金属が原因のアレルギーや金属の接触で発生するガルバニー電流なども自律神経に悪影響を与えるため、それらを取り除いていくことも大変に効果的であることがわかってきています。

一般の病院における血液検査や内視鏡検査が中心の診療では一人の体に1200 100兆個存在すると言われる腸内フローラを検査することはできません。また、薬物療法や食事療法などの一般の治療法ではなかなか抜本的な改善には繋がらず、症状を繰り返してしまうお子さんも多いのが現実です。

当クリニックでは腸内フローラ検査と口腔内金属アレルギー検査をいち早く取り入れ、数多くの治療実績を上げております。お子さんが過敏性腸症候群に罹患している、または罹患している可能性があれば、ぜひ一度当クリニックにご相談ください。