過敏性腸症候群(過敏性大腸炎 略称;IBS)の予防・治療に有効な4つの対策とは?

2019年12月12日

監修:長岡 美妃先生

現代医療に携わりながら病の根本原因、医療本来の在り方、さらに真の社会の在り方、女性の生き方を追求している医師。 東京女子医大消化器外科センターにて癌の外科治療に従事。
その後、福岡の秋本病院にて緩和ケアセンター長として多数の方の精神的苦痛を和らげてきた経験をもつ。 内視鏡の技術にも定評がある上、コミュニケーション能力が非常に高く、患者様からの信頼がとても厚い。 著書:『「真の」医療者をめざして』 他

過敏性腸症候群(IBS)はストレスが特有の病気で、便秘や下痢が続いたり、それらが交互に来る症状が長期的に続きます。炎症や潰瘍といった器質的異常が認められないため、なかなか病気としての診断が難しいのも特徴です。今回はそんな過敏性腸症候群を予防・対策するにはどうしたらよいかについて考えていきましょう。

過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS)は大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称です。病院で血液検査や内視鏡検査をしても、腸管には腫瘍や潰瘍といった異常がみつからないため、診断が難しい病気です。

過敏性腸症候群を引き起こす原因もいまだ明確ではありませんが、大きく分けて2つの原因が考えられています。

一つは、自律神経のバランスが乱れた結果、不安や緊張といったストレスが自律神経を介して腸の異常な運動を引き起こしているというもの。

もう一つが神経伝達物質「セロトニン」の影響です。精神の安定に関わるため幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンは約90%が腸内で作られますが、腸内フローラのバランス崩壊により産生不足、あるいは産生過多が起こると自律神経に影響を与えます。

ストレスによって腸のセロトニンが分泌されると腸内のセロトニン受容体と結合し蠕動運動に異常が発生。それにより腸の不快感、腹痛、下痢などを引き起こすとされています。

腸と脳は「腸脳相関」と言われるほど密接な関わりがあり、そのシグナルが自律神経の乱れによりうまく伝達できないと腸と意識に乖離が生じてしまいます。

過敏性腸症候群がストレスと関わりの深い病気であることは間違いなく、治療方法も食事療法や運動療法、薬物療法、心理療法等が一般的ですが、なかなか改善に繋がっていないのも現状です。

10代〜30代の若い世代が罹患しやすいため学生や社会人としての活動が阻まれることで、引きこもりがちになるなどQOL(生活の質)の低下も問題です。


一時的なストレスから発症することから神経症、うつ病の一つと考えられることもあります。さらに胃腸の身体的症状のみならず、めまいや頭痛、同期、肩こりなどを伴う自律神経失調症や睡眠障害、不安、気分の落ち込みによるうつ病、イライラといった精神状態が現れることも多くあります。

過敏性腸症候群(IBS)の症状4タイプとは?

2ヶ月以上、下痢もしくは便秘が続いている」「下痢と便秘を交互に繰り返す」「不安や緊張といったストレスによって急に激しい腹痛に襲われる」「ガス漏れが続く」「人が背後にいるとガスが止まらなくなる」「急にトイレに行きたくなるので外出が不安」「ストレスを感じやすい」「頭痛が続く」「慢性的に吐き気がある」「うつっぽい」

これらの症状が2ヶ月以上続きながらも、器質的異常が認められない場合は過敏性腸症候群(IBS)に罹患している可能性があります。

症状は便の形状によって便秘型、下痢型、混合型(便秘と下痢を交互に繰り返す)、分類不能型の4タイプに大別されます。

①下痢型

男性に多く、少しでもストレスを感じると下痢を引き起こします。腹痛を伴うことが多く、便に粘液が混ざることもあります。

②便秘型

女性に多く、ストレスにより便秘が続きます。硬い便やコロコロ便が多いです。

③混合型

腹痛及び腹部の違和感、下痢と便秘が複数日間隔で交互に現れます(交代性便通異常)。

④分類不能型

上記いずれにも当てはまりませんが、便の形などで判断します。

またガスがずっと漏れ続ける症状も見られ、背後に人が立つとかならずガスが漏れてしまうという症状もまれに見られます。

過敏性腸症候群(IBS)の対策方法を解説

過敏性腸症候群(IBS)はストレスと密接な関わりをもつ病気です。過敏性腸症候群の対策をするには、リズムのあるライフスタイルを送り、ストレスを溜めない、そしてリセットできる環境が大切です。過敏性腸症候群の対策のために、できることからはじめましょう。

【対策1】生活のリズムを整える

ストレスを蓄積しないためにも、排便のタイミングを逸しないためにも大切なのが生活のリズム。ウォーキングなど適度な運動を心がけ、質の良い睡眠をとる対策を心掛けましょう。

スマホやパソコンを操作しながらの夜更かしは、ブルーライトの刺激で体内時計も乱れやすくなります。寝不足を極力さけ、適度なリズムのあるライフスタイルを心がけましょう。

【対策2】食生活を見直す

過敏性腸症候群は食事でも対策可能です。食事は脂っこいものや刺激が強いものをとりすぎないように気をつけて、時間はなるべく規則的に、栄養のバランスよく適度な量を3食とるようにしましょう。

朝食を抜く人はかなり多いようですが、朝は大腸反射が起こりやすく、朝食をとることで出かける前に排便が起こりやすくなります。また、腸内環境を整える食物繊維は水溶性と不溶性を合わせて20gはとるようにしましょう。食事の時間をリラックスタイムにすることも対策として大切です。

【対策3】ストレスを溜めない心を持つ

現代の生活の中で、ストレスを遮断するというのは、対策として無理があります。だからこそ、ストレスが生じたときにどのような心持ちで対処するかが大切な対策方法です。

ピンとはりつめた心では、かえってダメージが強くなってしまうことも。リズムのある生活を心がけながら、柔軟な心をイメージして、気分転換できるスポーツや趣味などを持つようにしましょう。

【対策4】リラックスタイムを設ける

一日中張り詰めた気持ちでは、ストレスを発散するタイミングがありません。

仕事に集中したら数分でもリセットできる時間を設けたり、バスタイムは入浴剤を使ってのんびりくつろいだり、女性ならスキンケアのひとときを優雅に過ごすなど、日々少しでもリラックスできる時間をつくることが、ストレスマネジメントの対策に繋がります。

また、冷えは自律神経と深く関わっている場合がありますので、体を冷やさないように気をつけることも、対策として大切です。

過敏性腸症候群(IBS)対策の最新治療法とは?

では、過敏性腸症候群(IBS)にかかった場合の治療はどのような方法がとられるでしょうか。まずは消化器科で受診するところからはじまります。食事療法や運動療法、心理療法、薬物療法が一般的です。しかしながらそれぞれ一定の効果は得られても症状が長期に及ぶ場合はなかなか納得のいく改善には繋がらない場合も多いのです。

過敏性腸症候群の最新の治療方法として注目を集めているのが、腸内フローラマッチングによる腸内環境の抜本的改善です。患者さんがどのような腸内細菌叢(腸内フローラ)であるかを腸内フローラ検査で確認し、検査結果から適切な乳酸菌をマッチングさせることで腸内フローラのバランスを整えます。

腸内環境が整えば自律神経の乱れも改善するため、長年悩まされていた過敏性腸症候群の症状からもたくさんの方が回復されています。また、口腔内の金属が原因のアレルギーや金属の接触で発生するガルバニー電流なども自律神経に悪影響を与えるため、それらを取り除いていくことも効果的で治癒に繋がっています。

一般の病院における血液検査や内視鏡検査が中心の診療では一人の体に1200種 100兆個存在すると言われる腸内フローラを検査することはできません。当クリニックでは腸内フローラ検査と口腔内金属アレルギー検査をいち早く取り入れ、数多くの治療実績を上げております。ぜひ一度当クリニックにご相談ください。