過敏性腸症候群(過敏性大腸炎 略称;IBS)と便秘の関係、その治療方法を解説

2019年12月14日

監修:長岡 美妃先生

現代医療に携わりながら病の根本原因、医療本来の在り方、さらに真の社会の在り方、女性の生き方を追求している医師。 東京女子医大消化器外科センターにて癌の外科治療に従事。
その後、福岡の秋本病院にて緩和ケアセンター長として多数の方の精神的苦痛を和らげてきた経験をもつ。 内視鏡の技術にも定評がある上、コミュニケーション能力が非常に高く、患者様からの信頼がとても厚い。 著書:『「真の」医療者をめざして』 他

便秘が続いて膨満感が不快…これは女性に多く見られる便秘の症状です。そもそも女性はホルモンのバランスで便秘しやすい傾向にあります。ホルモンが体に水分を貯める作用によって大腸の水分が不足しやすく、またホルモンは大腸の蠕動運動を抑制する作用があるため便秘しやすくなるからです。

また一般的に女性は男性に比べて便を押し出す力にもなっている腹筋が弱いことも便秘になりやすい理由のひとつです。ダイエットによる食事制限などにより、スムーズな排便と良好な腸内環境に欠かせない食物繊維が不足したり、水分不足によって便が硬くなってしまうことが便秘を招くこともあります。

しかしながら、便秘は単に腸の働きが悪いだけでなく実は病気が原因で起こっていることも。便秘が侮れないのは、そこに理由があります。

便秘の原因と過敏性大腸炎との関係について

便秘が非常に一時的なもので、ホルモン周期や生活習慣の見直しによって改善するのであれば良いのですが、長期的に何度も繰り返したり、腹痛をなど不調が伴う場合は、何らかの疾患を抱えている可能性があります。

便秘は、機能性便秘と器質性便秘の大きく2種類に分かれます。機能性便秘は、腸に器質的異常が認められないのに起こる便秘で、環境の変化などによるものです。器質性便秘は、大腸に腫瘍や炎症など、何らかの異変が原因と思われる症状です。

機能性便秘は偏った食事で、食物繊維や水分など腸内環境を整える要素が不足する食事性便秘。便意をもよおした時にトイレに行けず、排便のタイミングを逸することなどによる直腸性便秘。加齢による腹筋力の衰えや大腸の蠕動運動力の低下による弛緩性便秘。そして自律神経の乱れなどに起因するけいれん性便秘があります。

過敏性腸症候群(IBS)による便秘は、けいれん性便秘にあたります。

器質性便秘は甲状腺機能低下や糖尿病などで腸管の運動能力が低下して起こるもの、妊娠によって腸管が圧迫されておこるものから潰瘍性大腸炎やクローン病、あるは大腸ガンといった深刻な病状を抱えたものまで様々です。

便秘型の過敏性腸症候群( IBS)にかかりやすい性別と性格を解説 

過敏性腸症候群(IBS)には、その便の形状によって下痢型・便秘型・混合型・分類不能型の4タイプに分かれますが、便秘型にかかりやすいのは主に女性です。

そして性格的には、几帳面で神経質なタイプ、対人関係にストレスを感じやすい人などが挙げられます。真面目な頑張り屋タイプも、プレッシャーが許容範囲を超えてしまうと便秘が続くようになるなど、過敏性腸症候群(過敏性大腸炎 IBS)の症状があらわれやすくなります。

過敏性腸症候群( IBS)による便秘

そもそも毎日排便がなくても必ずしも便秘とは言えません。人によってそのリズムは様々です。たとえ2日に一度の排便でも、不快感がなければそれは正常な排便と言えます。しかしながら、慢性的な便秘になると、やはりお腹の膨張感や不快感を感じることになり、さらにストレスにも繋がります。

けいれん性便秘である、過敏性腸症候群(IBS)の便秘は、ストレスなどの心因により自律神経が乱れて、大腸の蠕動運動が低下することが大きな原因の一つです。それにより腸の中にある便を押し出す力が弱まるため移動が遅くなり、水分が十分に行き渡らずに硬い便になることも便秘を加速させる理由です。

自律神経には、活動を活発化させる交感神経と、活動への休息を促す副交感神経があり、腸は副交感神経が優位のときに働きが活発になります。しかし緊張や不安といったストレスは、脳の視床下部の働きに影響を与え、自律神経に異常な伝達を出します。これが自律神経失調症の症状で、腸の蠕動運動をおかしくしてしまう原因になるのです。

自律神経の安定には腸内フローラが大きく関わっている

緊張や不安などのストレスが引き金となり、自律神経が乱れて過敏性腸症候群の症状へ繋がることはお話ししました。腸と脳は「腸脳相関」と言われるほど密接な関わりがあります。

心の安定に関わりのある「セロトニン」や、やる気を引き出す「ドーパミン」などの神経伝達物質はそのほとんどが腸内で産生されていますがそのカギを握っているのが「腸内フローラ(腸内細菌叢)」です。

腸に常在する細菌の数はおよそ120兆個といわれ、近年の研究によりこれらの常在菌は人の健康状態はもちろん、実は精神にも強い影響を及ぼしていることがわかってきました。

腸内フローラのバランスがよくないと、「腸脳相関」の繋がりがある脳にはダイレクトに悪い影響を及ぼします。例えば、腸内細菌のバリエーションや菌数が少ないと、ストレス耐性が低く不安行動を起こしやすい傾向にあります。

すなわち、自律神経の乱れが大きく関係している、過敏性腸症候群(過敏性大腸炎 IBS)の便秘は、一時的な下剤等を常習的に服用するよりも、まずは腸内環境をしっかりと整えることが重要。それが好循環に繋がれば、根本的治療も叶いやすいと言えるわけです。

では、乳酸菌配合の健康食品を摂れば治るのかと言えば、必ずしもそうではありません。乳酸菌が体によいと言われ、ここ数年はブームといえるほど、各メーカーがあらゆる乳酸菌食品を世に送り出しています。しかし、実は乳酸菌は腸内にある菌の種類や、バランスによってどのような種類の菌が定着するか人それぞれ。よって、ある人にはとてもよく効くけれど、ある人にはほとんど意味をなさないというのが現実でもあります。

よって、腸内フローラのバランスを高めるためには、その人に合う、必要な菌を定着させることが重要です。万人に効果を発揮する乳酸菌はなく、各人の腸内フローラにあわせたテーラーメイドの乳酸菌こそが、腸内環境を整え、自律神経を正常へ促すものと考えられます。

過敏性腸症候群(IBS)の高い治癒率で注目を集める腸内フローラマッチング

そこで過敏性腸症候群(IBS)の最新の治療方法として注目を集めているのが、腸内フローラマッチングによる腸内環境の抜本的改善です。

患者さんがどのような腸内細菌叢(腸内フローラ)であるかを、腸内フローラ検査で確認し、検査結果から適切な乳酸菌をマッチングさせることで、腸内フローラのバランスを整えていきます。

腸内環境が整えば自律神経の乱れも改善するため、長年悩まされていた過敏性腸症候群の症状からも回復に至るケースが既にかなりの数に上っています。

また、口腔内の金属が原因のアレルギーや、ガルバニー電流なども自律神経に悪影響を与えるため、それらの有無を確認して原因と考えられる場合は、取り除いていくことも効果的な治癒に繋がります。

血液検査や内視鏡検査では、一人の体に1200 100兆個存在すると言われる腸内フローラを検査することはできません。腸内フローラマッチングは、それを専門としているクリニックでないと、まだまだ受けられない治療方法なのです。

当クリニックでは、腸内フローラ検査と口腔内金属アレルギー検査をいち早く取り入れ、数多くの治療実績を上げております。便秘の悩みから解放された、心地よい毎日を過ごすために、ぜひ一度当クリニックにご相談ください。